遺産相続の手続きは誰に頼む?専門家の種類と費用・選び方
遺産相続の手続きを誰に頼むかによって、費用・スピード・解決できる問題の範囲が大きく変わります。相続には登記・税申告・相続人間の交渉など複数の手続きが絡み合い、窓口を間違えると二度手間になることも少なくありません。
「税理士に頼んだら登記は別の専門家に依頼してと言われた」「弁護士費用が高すぎて断念した」——そんな経験談はよく耳にします。この記事では、相続手続きの依頼先となる5種類の専門家を費用・対応範囲・メリット・デメリット別に整理し、あなたの状況に合った最適な選び方をわかりやすくお伝えします。
この記事でわかること
- 司法書士・税理士・弁護士・行政書士・信託銀行それぞれの対応範囲と費用相場
- トラブルなし・税申告あり・争い発生などケース別の最適な依頼先
- 費用を抑えたいときに使える法テラスや無料相談の活用法
- 複数の専門家が必要になるケースでの窓口まとめ方のコツ
★ あわせて準備したい
相続手続きを自分でも理解したい方に
専門家に依頼する前に全体像を把握しておくと、相談がスムーズになります。相続手続きの基本を解説した書籍で、費用交渉や書類確認の際にも役立ちます。
01
01 相続手続きを専門家に頼む必要があるのはなぜか
相続が発生すると、預貯金の名義変更・不動産の相続登記・相続税の申告・遺産分割協議書の作成など、多岐にわたる手続きが発生します。これらはそれぞれ別の法律・別の専門家が担当する領域であり、一人の専門家がすべてをカバーできるわけではありません。
- 不動産の名義変更(相続登記)は2024年4月1日から義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科されます。
- 相続税の申告期限は相続開始を知った翌日から10ヶ月以内で、期限を過ぎると延滞税・加算税が発生します。
- 相続放棄を検討する場合は3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。
期限が複数あり、かつ手続きの種類ごとに担当窓口が異なるため、最初に「自分のケースでは何が必要か」を整理し、適切な専門家に依頼することが時間・費用の節約につながります。
相続手続きは期限が短いものから順に動く必要があります。まず「相続放棄するか否か(3ヶ月)」を決め、次に「税申告が必要か(10ヶ月)」を確認し、「登記義務(3年)」を果たす——この順番を意識して専門家選びを始めましょう。
02
02 司法書士|登記・協議書作成はここへ(費用3〜20万円)
不動産の相続登記や遺産分割協議書の作成を依頼するなら、司法書士が最もコストパフォーマンスに優れた選択肢です。司法書士は法務局への登記申請を代理できる唯一の専門家であり、相続手続きの中核を担います。
- 対応できる業務:相続登記(不動産名義変更)・遺産分割協議書の作成・法定相続情報一覧図の作成・預貯金解約の手続き補助
- 費用の目安:登記手続き全般で3〜20万円程度(不動産の数・評価額・複雑さによる)。なお登録免許税は別途「固定資産税評価額×0.4%」が必要です。
- できないこと:相続税申告・相続人間のトラブル交渉・調停・裁判手続き
相続人全員が合意しており、不動産があるケースでは司法書士を最初の窓口にするのがおすすめです。遺産分割協議書には相続人全員の署名・実印・印鑑証明書(発行3ヶ月以内)が必要で、司法書士はこの書類取得もサポートしてくれます。税申告が必要な場合は提携の税理士を紹介してもらえることも多く、ワンストップに近い対応が可能です。
03
03 税理士|相続税申告が必要なら必須(費用:遺産の0.5〜1%)
相続財産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える場合、相続税の申告が必要です。この申告手続きを担えるのは税理士だけです。司法書士や行政書士に申告書の作成を依頼することはできません。
- 対応できる業務:相続税申告書の作成・提出、財産評価(土地・株式・非上場株など)、税務調査対応、節税対策の提案
- 費用の目安:遺産総額の0.5〜1%が相場。遺産が5,000万円なら25〜50万円程度。土地の評価や複数の財産がある場合は加算されることもあります。
- 選び方のポイント:相続税を年間何件扱っているかを確認しましょう。相続専門でない税理士に依頼すると、土地評価の特例(小規模宅地等の特例など)を見落とすリスクがあります。
相続税の申告期限は相続開始を知った翌日から10ヶ月以内と短く、財産の洗い出しから評価・申告書作成まで時間がかかります。相続発生後できるだけ早く、相続専門の税理士に相談することを強くおすすめします。
基礎控除の計算例:法定相続人が配偶者と子2人の計3人なら、3,000万円+600万円×3人=4,800万円。遺産総額がこれを超えるなら税理士への相談が必須です。
04
04 弁護士|相続トラブル・調停・交渉はここへ(費用10万円〜)
相続人間で遺産の分け方についてもめている、遺言書の有効性を争いたい、特定の相続人が財産を隠しているかもしれない——こうしたトラブルが発生している場合は、弁護士への依頼が不可欠です。弁護士だけが相続人の代理人として交渉・調停・訴訟を行えます。
- 対応できる業務:遺産分割調停・審判の代理、遺留分侵害額請求、遺言書の有効性に関する訴訟、相続人の代理交渉、相続財産の調査
- 費用の目安:着手金10〜30万円+報酬金(獲得額の10〜16%程度)が一般的。調停や訴訟に発展すると総額100万円以上になるケースもあります。
- 注意点:登記申請の代理や相続税申告はできません。別途司法書士・税理士との連携が必要になります。
トラブルがない段階で弁護士に依頼すると費用が割高になりやすいため、まずは「争いがあるかどうか」を判断基準にしましょう。一方、少しでもトラブルの兆候があれば早めに弁護士に相談することで、調停・訴訟への発展を防げる場合があります。
05
05 行政書士・信託銀行|書類作成のみ安く、または丸ごと任せたい(費用3〜10万円/1〜3%)
司法書士・税理士・弁護士以外にも、相続手続きを扱う窓口が2つあります。状況によっては有力な選択肢になります。
- 行政書士:遺産分割協議書・相続関係説明図などの書類作成に対応。費用は3〜10万円と比較的安価です。ただし不動産の登記申請代理はできないため、不動産がある場合は司法書士も別途必要になります。相続人全員が合意しており不動産がなく、書類作成だけが必要なケースに向いています。
- 信託銀行・遺産整理業者:財産の調査から名義変更・売却・分配まで一括して任せられます。費用は遺産総額の1〜3%が相場で、1億円の遺産なら100〜300万円程度。手間を省きたい・相続人が高齢で動けないケースに有効ですが、費用は最も高くなります。
行政書士は登記や税申告の代理はできない点を覚えておきましょう。「書類だけ作ってもらえればいい」という場合に限定して活用するのが賢明です。信託銀行は費用が高い分、窓口が一本化されるメリットがあり、複雑な財産構成を持つ富裕層や遠方に住む相続人がいるケースで特に重宝されます。
06
06 ケース別・最適な依頼先の選び方まとめ
どの専門家に頼むべきかは、相続の内容によって異なります。以下の判断フローを参考にしてください。
- 不動産がある → まず司法書士へ。2024年から相続登記が義務化されており、3年以内に手続きが必要です。税申告が必要なら税理士と連携してもらいましょう。
- 遺産が基礎控除を超える・相続税が心配 → 税理士へ。できるだけ早く(相続発生後2〜3ヶ月以内)に相談を始めることが重要です。
- 相続人間でもめている・遺言書に不満がある → 弁護士へ。交渉・調停まで一括して対応できます。
- 不動産なし・全員合意・書類作成だけ必要 → 行政書士が最安値。費用を抑えたい場合に有効です。
- 手続きをすべて任せたい・高額財産がある → 信託銀行・遺産整理業者。費用は高いが、ワンストップで対応してもらえます。
複数の専門家が必要になるケースでは、最初に相談した専門家に「他の手続きはどこに頼めばよいか」を聞いてみましょう。多くの場合、提携先を紹介してもらえます。また、複数の事務所に無料相談を活用して比較することも、費用と信頼感の両面から有益です。
迷ったら「司法書士か税理士」が入口として最適です。相続登記と税申告は多くの相続で必要になり、両者は互いに提携していることが多いため、一方に相談すれば他方も紹介してもらえます。
07
07 費用を抑える方法|法テラス・無料相談の活用術
専門家への依頼費用が心配な方のために、費用を抑えるための制度と方法を紹介します。
- 法テラス(日本司法支援センター):収入・資産が一定基準以下の方を対象に、弁護士・司法書士への相談費用の立替制度があります。無料法律相談(3回まで)も利用可能で、弁護士費用の分割払い支援も受けられます。まず法テラスの公式サイトまたは電話(0570-078374)で収入審査を受けましょう。
- 各士業の無料相談を活用:司法書士会・税理士会・弁護士会が定期的に無料相談会を開催しています。まずここで全体像を把握してから依頼先を絞ると効率的です。
- 市区町村の無料相談窓口:多くの自治体が月数回、弁護士や司法書士による無料法律相談を実施しています。役所の「市民相談」窓口に問い合わせてみてください。
- 複数の専門家に見積もりを依頼:相続手続きの費用は事務所によって差があります。2〜3か所に相談・見積もりを取ることで、適正価格の感覚をつかめます。
「費用がかかるから自分でやろう」と考える方もいますが、相続登記や税申告のミスは後から修正コストが発生することもあります。特に相続税の申告漏れは税務調査の対象になるリスクがあるため、少なくとも専門家への無料相談だけは受けることをおすすめします。
この記事のまとめ
- 不動産の相続登記は司法書士へ。2024年から義務化され、3年以内に申請が必要です。
- 遺産が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人数)を超えたら税理士への相談が必須です。
- 相続人間でトラブルがある場合は弁護士へ。交渉・調停・訴訟の代理が可能なのは弁護士だけです。
- 書類作成のみなら行政書士(3〜10万円)、すべて任せたいなら信託銀行(遺産の1〜3%)が選択肢です。
- 費用が心配なら法テラスの無料相談・費用立替制度や、各士業会の無料相談会を活用しましょう。
あわせて読みたい
GUIDE
遺産相続の手続きの流れ|やることと期限を一覧で解説
GUIDE
遺産相続の期限一覧|遺産分割の時効と放置のリスクを解説
GUIDE
遺産相続と兄弟|法定相続分・分け方ともめない工夫
EDITORIAL TEAM
こもれび編集部 | 相続・諸手続き担当
監修:終活・遺品整理の実務に詳しい編集チーム
本記事は公的機関の情報や一般的な実務をふまえて編集部が作成し、定期的に見直しています。内容に誤りがあれば編集部までご連絡ください。
最終更新日: 2026年06月25日




