親が亡くなった後には、悲しむ間もなく数十種類の手続きが待ち受けており、期限を過ぎると過料や損失が生じるものもあります。何から手をつければよいか迷わないよう、死亡直後から3年以内までの手続きを期限順に整理しました。

「何をいつまでにしなければならないのか」「優先順位はどこか」という不安を抱えている方へ、この記事では7日以内の緊急手続きから相続登記の義務化対応まで、やることを時系列のチェックリスト形式でまとめています。手順を一つずつ確認しながら進めることで、漏れなく手続きを完了させることができます。

この記事でわかること

  • 死亡直後から3年以内まで、期限別にやることが分かる
  • 相続放棄・相続税申告・相続登記それぞれの期限と注意点が分かる
  • 法定相続情報一覧図の活用で手続きを効率化できることが分かる
  • 銀行口座凍結後の仮払い制度など緊急時の対処法が分かる

★ あわせて準備したい

相続手続きを自分で進めるための参考書

相続手続きは種類が多く、専門用語も難解です。全体像を把握するために、図解入りの相続実務書を手元に置いておくと手続き漏れを防ぐことができます。

10ヶ月以内 相続税申告期限
相続開始を知った翌日から
3ヶ月以内 相続放棄の申述期限
家庭裁判所へ延長申請可
3年以内 相続登記の義務化期限
2024年4月1日施行・違反は10万円以下の過料

01

01 親が亡くなった直後から7日以内にやること

親が亡くなったら、悲しみの中でも最初の数日間に行政・医療・葬儀関係の手続きを集中的に進める必要があります。特に死亡届の提出は7日以内という法定期限があり、これを怠ると5万円以下の過料が科される場合があります。

  • ①死亡診断書の受け取り:医師から交付される死亡診断書は複数枚コピーを取っておく(年金・保険・相続手続きで繰り返し使用する)
  • ②死亡届の提出:死亡診断書と一体になった「死亡届」を、死亡を知った日から7日以内に市区町村役所へ提出する(国外での死亡は3ヶ月以内)
  • ③火葬許可証の取得:死亡届提出と同時に役所から発行される。火葬場に提出する必須書類
  • ④葬儀・火葬の手配:葬儀社との打ち合わせ、菩提寺への連絡、親族・勤務先への通知を速やかに行う
  • ⑤遺言書の確認:自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要。公正証書遺言はすぐに内容を確認できる

死亡診断書は原本1枚のみが医師から交付されますが、以降の手続きで何度も提出が求められます。まず10枚程度コピーを取り、原本は厳重に保管しておきましょう。また、この時期に遺言書の存在も必ず確認してください。遺言書の内容によってその後の相続手続きの流れが大きく変わります。

01 親が亡くなった直後から7日以内にやること
写真: Tara Winstead / Pexels

02

02 14日以内・1ヶ月以内にやること|行政手続きの手順

葬儀が終わったら、次は行政への届出手続きです。健康保険・住民票関係の手続きには期限が設けられており、特に世帯主変更届は14日以内が原則です。年金の受給停止については、未申告のまま受給を続けると不正受給とみなされ返還義務が生じるため、速やかに対応してください。

  • ③世帯主変更届(14日以内):故人が世帯主だった場合、新しい世帯主を届け出る。同一世帯の人がいない場合は不要
  • ④健康保険の資格喪失届(14日以内):国民健康保険は市区町村、会社員の場合は勤務先経由で年金事務所へ提出。保険証は返却する
  • ⑤介護保険被保険者証の返却:65歳以上の場合、市区町村へ介護保険証を返却する(14日以内が目安)
  • ⑥年金受給の停止手続き(原則14日以内):故人が年金を受給していた場合、日本年金機構へ「受給権者死亡届」を提出。年金事務所または街角の年金相談センターで手続き可能
  • ⑦遺族年金・寡婦年金の申請(5年以内だが早期に):配偶者や子どもが要件を満たす場合、遺族厚生年金や遺族基礎年金の申請を行う

健康保険については、故人が国民健康保険に加入していた場合と、被用者保険(会社の健康保険)の被扶養者だった場合で手続き先が異なります。また、高額療養費の還付が受けられる可能性もあるため、入院・通院があった場合は合わせて確認してみましょう。

03

03 3ヶ月以内にやること|相続放棄と相続人・財産の調査

相続手続きの中でも特に重要な判断が「相続するか放棄するか」の選択です。相続放棄の期限は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません(民法915条)。この期限を過ぎると原則として単純承認したものとみなされ、故人の借金も引き継ぐことになります。

相続放棄の注意点:3ヶ月の熟慮期間は、正当な事由がある場合に家庭裁判所への申請で延長が可能です。財産・負債の調査が複雑な場合は早めに弁護士や司法書士に相談してください。なお、相続放棄は相続人一人ひとりが個別に行うものであり、一人が放棄しても他の相続人に影響はありません。

  • 相続人の調査:故人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)を取り寄せ、法定相続人を確定する。想定外の相続人(認知した子など)が存在する場合がある
  • 相続財産の調査:預貯金・不動産・有価証券・負債(借金・保証債務)・生命保険の確認を行う。固定資産税の通知書や金融機関の通帳、不動産登記事項証明書が手がかりになる
  • 法定相続情報一覧図の作成・申請:法務局(登記所)に申請することで、相続人関係を証明する一覧図の認証を無料で受けられる。複数枚交付可能で、銀行・法務局・年金など各手続きで戸籍謄本束の代わりに使える
  • 限定承認の検討:財産の範囲でのみ負債を引き継ぐ「限定承認」は、相続人全員が共同で家庭裁判所に申述する必要がある。期限は相続放棄と同じ3ヶ月以内

法定相続情報一覧図は、一度取得しておくと各種手続きが格段にスムーズになります。戸籍謄本を何度も取り寄せる手間が省けるため、複数の金融機関や法務局で手続きする予定がある場合は必ず活用してください。

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04 4ヶ月以内にやること|準確定申告の手順

故人が生前に事業所得・不動産所得・給与所得(複数箇所から受給)などの確定申告義務があった場合、相続人が代わりに「準確定申告」を行う必要があります。準確定申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内(所得税法125条)です。通常の確定申告と違い、翌年の3月15日ではないため注意が必要です。

  • 対象となる故人:事業所得・不動産所得・給与所得(2,000万円超または複数給与)・年金所得(400万円超)など確定申告が必要だった人
  • 申告期間:故人の1月1日から死亡日までの所得を申告する
  • 申告先:故人の住所地を管轄する税務署。相続人全員が連署した「準確定申告書」を提出する
  • 医療費控除の活用:故人が生前に支払った医療費も準確定申告で控除できる。領収書をまとめておく
  • 還付金の扱い:準確定申告で還付金が生じた場合、相続財産として相続税の計算対象になる

準確定申告は、相続人が複数いる場合に連署が必要なため、相続人全員に速やかに連絡を取り、協力して進めることが重要です。税務署への相談や、税理士への依頼も検討するとよいでしょう。期限の4ヶ月はあっという間に過ぎるため、早め早めの対応を心がけてください。

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02 14日以内・1ヶ月以内にやること|行政手続きの手順
写真: cottonbro studio / Pexels

05

05 10ヶ月以内にやること|遺産分割と相続税申告

相続税の申告・納付期限は相続開始を知った翌日から10ヶ月以内(国税庁)です。この期限は延長できないため、遺産分割協議と並行して早めに準備を進める必要があります。なお、遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)以下であれば相続税の申告は不要です。

相続税の基礎控除の計算例:法定相続人が配偶者・子ども2人の計3人の場合、基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円。遺産総額がこの金額以下なら申告不要です。ただし、配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例など各種控除の適用には申告が必要な場合があります。

  • ⑧遺産分割協議(期限なし・ただし申告前に):相続人全員で遺産の分け方を話し合う。全員の合意が必要で、一人でも欠けると無効
  • 遺産分割協議書の作成:合意内容を書面化。相続人全員の署名・実印・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)が必要。公正証書にする義務はないが、不動産や預金解約で提出が求められる
  • 銀行口座の解約・名義変更:口座凍結後の仮払い制度として、1金融機関あたり150万円または預金残高×1/3(相続人1人あたり)まで仮払いを受けられる
  • ⑧相続税申告・納付:相続税が発生する場合、税理士に依頼するか自分で作成して税務署に申告。相続税は原則として現金一括納付(延納・物納制度あり)
  • 生命保険金の請求:生命保険の死亡保険金は保険会社に請求。受取人固有の財産だが、相続税の計算では「500万円×法定相続人数」の非課税枠がある

遺産分割協議が10ヶ月以内にまとまらない場合でも、相続税の申告・納付期限は延長されません。分割が未確定の場合は「法定相続分」で申告した後、修正申告を行う方法があります。相続税が高額になる場合は早めに税理士に相談しましょう。

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06 3年以内にやること|義務化された相続登記

2024年4月1日から、不動産の相続登記が義務化されました。相続(遺贈)によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法76条の2)。この義務化は2024年4月1日以前に発生した相続にも適用されるため、過去の未登記物件も対象です。

  • ⑨相続登記の申請(法務省):法務局(登記所)に申請する。必要書類は遺産分割協議書、相続人全員の戸籍謄本、固定資産評価証明書など
  • 登録免許税:相続登記の登録免許税は「固定資産税評価額×0.4%」。売買による移転登記(2.0%)より大幅に低い
  • 相続人申告登記(簡易手続き):遺産分割が整っていない場合でも、「相続人申告登記」を行えば義務違反を回避できる暫定措置
  • 司法書士への依頼:登記申請は自分でも可能だが、書類が複雑なため司法書士に依頼するのが一般的。費用は物件・地域によって異なるが数万〜十数万円程度

相続登記を放置すると、将来的に土地の売却や担保設定が困難になります。「いつか」と先延ばしにせず、相続開始後なるべく早い段階で司法書士に相談することをお勧めします。法務省が提供する「登記・供託オンライン申請システム」を利用したオンライン申請も可能です。

07

07 手続きを効率化するためのポイントと注意事項

親が亡くなった後の手続きは種類が多く、複数の機関を同時並行で動かさなければなりません。効率よく進めるためのポイントをまとめます。

  • 法定相続情報一覧図を最初に取得する:法務局に申請して認証を受けた一覧図は、銀行・法務局・年金事務所など複数の機関で戸籍謄本の代替として使用できる。無料で何枚でも交付可能
  • 必要書類のコピーを大量に用意する:死亡診断書・戸籍謄本・印鑑証明書は複数枚コピーを取っておく。各窓口で毎回取得する手間が省ける
  • 専門家の活用:弁護士(相続争い・遺産分割協議)、税理士(相続税申告・準確定申告)、司法書士(相続登記・遺産分割協議書作成)、行政書士(各種届出書類)と役割が分かれている
  • グリーフケアを忘れない:手続きに追われる中でも、精神的なサポートを受けることが大切。地域の相談窓口や遺族会などを活用する
  • デジタル遺産への対応:故人のSNSアカウント・サブスクリプションサービス・暗号資産なども相続財産になる場合がある。パスワード管理ツールやメール履歴を確認する

手続きの優先順位まとめ:①死亡届(7日以内・最優先)→②葬儀・健康保険・世帯主変更(14日以内)→③相続放棄の検討・相続人と財産の調査(3ヶ月以内)→④準確定申告(4ヶ月以内、必要な場合)→⑤遺産分割・相続税申告(10ヶ月以内)→⑥相続登記(3年以内)の順に対応しましょう。

国税庁のウェブサイトでは相続税の計算ツールや申告書作成コーナーが提供されており、法務省の「法テラス」では法律相談を低費用で受けることができます。裁判所のウェブサイトには相続放棄・限定承認の申述書式も掲載されています。公的機関のサービスを積極的に活用して、確実に手続きを完了させましょう。

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この記事のまとめ

  • 死亡届は7日以内に市区町村役所へ提出する義務がある(期限超過で過料の可能性)
  • 相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述(延長申請可)
  • 準確定申告は相続開始を知った翌日から4ヶ月以内、相続税申告は10ヶ月以内が期限
  • 相続登記は2024年4月1日から義務化され、3年以内に登記しないと10万円以下の過料
  • 法定相続情報一覧図を活用すると、銀行・法務局・年金など複数機関の手続きを効率化できる

EDITORIAL TEAM

こもれび編集部 | 相続・諸手続き担当

監修:終活・遺品整理の実務に詳しい編集チーム

本記事は公的機関の情報や一般的な実務をふまえて編集部が作成し、定期的に見直しています。内容に誤りがあれば編集部までご連絡ください。

最終更新日: 2026年06月25日

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