遺産分割のやり直しはできる?全員合意が必要な条件と税務上の注意
遺産分割協議のやり直しは、相続人全員が合意すれば法律上は可能です。しかし、税務上では「当初の分割からの財産移転」とみなされ、贈与税や譲渡所得税が課される場合があります。
「一度決めた分割をどうしても変えたい」「後から遺産が見つかった」「協議の内容に納得できない」――そんな悩みを抱える方に向けて、やり直しの条件・手続き・税務リスクまで詳しく解説します。
この記事でわかること
- 遺産分割協議のやり直しができる条件と必要な合意範囲
- 税務上で認められるやり直しと認められないやり直しの違い
- やり直しで発生しうる贈与税・譲渡所得税のリスク
- 一部の相続人が反対した場合の家庭裁判所での解決方法
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01 遺産分割協議のやり直しとは?基本を理解しよう
遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった方)の財産をどのように相続人間で分けるかを全員で話し合い、合意する手続きです。一度成立した協議は法的に有効な契約とみなされますが、一定の条件を満たせばやり直すことができます。
やり直しが認められる主なケースは以下のとおりです。
- 相続人全員の合意がある場合:全員が「もう一度分け直そう」と同意すれば、再分割協議として有効に成立します。
- 協議に瑕疵(かし)があった場合:詐欺・強迫・錯誤(重大な勘違い)があった場合は、民法の規定により取り消しや無効を主張できます。
- 後から遺産が発見された場合:当初の協議に含まれていなかった財産については、新たに分割協議を行う必要があります。
【重要】遺産分割協議書には相続人全員の署名・実印・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)が必要です。やり直しの場合も同様の書類が求められます。
ただし、やり直しは民法上は可能でも、税務上は別の問題が生じることがあります。この点は後述するセクションで詳しく解説します。
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02 全員合意によるやり直し(再分割合意)の手続き
相続人全員が合意している場合は、「再分割協議」として新たな遺産分割協議書を作成することでやり直しができます。手続きの流れは以下のとおりです。
- ステップ1:全相続人への連絡と合意確認 やり直しの意思を全相続人に伝え、全員の同意を得ます。一人でも反対すれば、再分割協議は成立しません。
- ステップ2:新しい遺産分割協議書の作成 当初の協議書を白紙撤回する旨と、新たな分割内容を明記した協議書を作成します。
- ステップ3:全員の署名・実印・印鑑証明書の取得 遺産分割協議書には、相続人全員の署名(または記名)・実印の押印・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)が必要です。
- ステップ4:各種名義変更手続き 不動産は法務局で相続登記の変更、預金は各金融機関での再手続き、有価証券は証券会社での変更を行います。
なお、2024年4月1日から相続登記が義務化されており、相続開始を知った日から3年以内に登記しなければ10万円以下の過料が科される場合があります。やり直しで不動産の帰属先が変わる場合は、速やかに登記手続きを行いましょう。
また、やり直しに伴う登録免許税(相続登記)は固定資産税評価額×0.4%が基本ですが、登記の変更内容によって計算が異なる場合があります。専門家への相談を推奨します。
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03 一部の相続人が反対する場合の対処法
相続人の中に「やり直しに反対する人」がいる場合、任意での再分割協議は成立しません。このような場合は、家庭裁判所を通じた法的手続きが必要になります。
- 遺産分割調停:家庭裁判所の調停委員が間に入り、相続人全員で話し合います。調停が成立すれば調停調書が作成され、法的効力を持ちます。
- 遺産分割審判:調停でも合意に至らない場合、裁判官が法定相続分などを考慮して審判(判断)を下します。審判結果には拘束力があります。
【注意】当初の遺産分割協議が「詐欺・強迫・錯誤」によるものであれば、民法上の取消し・無効を主張して無効確認訴訟を提起することも可能です。この場合は弁護士への相談が必須です。
ただし、一度成立した協議書の内容に「錯誤」を主張するためには、重大な勘違い(例:当初知らなかった多額の負債があったなど)が必要であり、単に「結果に納得できない」というだけでは認められないことがほとんどです。
家庭裁判所への申立てには申立書・被相続人の戸籍謄本・相続人全員の戸籍謄本・遺産に関する資料などが必要です。手続きに不慣れな方は司法書士や弁護士に依頼することをお勧めします。
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04 税務上認められるやり直しと認められないやり直し
遺産分割のやり直しには、税務上「認められるもの」と「認められないもの(課税対象となるもの)」があります。この区別を理解することが非常に重要です。
税務上認められるやり直し(修正申告・更正請求が可能)
- 相続税の申告期限(相続開始を知った翌日から10ヶ月以内)までに分割が成立しなかったため「未分割」として申告した後、申告期限から3年以内に分割が成立した場合
- 「申告期限後3年以内の分割見込み書」を事前に提出していた場合は、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例も適用可能
税務上認められないやり直し(別途課税が発生)
- 一度成立した遺産分割協議を「全員合意」でやり直した場合、税務上は「当初の分割で取得した財産を他の相続人に移転した」とみなされます。
- 相続人間での財産の移転→贈与税の対象となる可能性があります
- 不動産を他の相続人に移転する場合→譲渡所得税の対象となる可能性があります
【重要】やり直しを検討する際は、必ず税理士に事前相談を行いましょう。税務上のやり直しが認められないケースでは、相続税に加えて贈与税・譲渡所得税が二重にかかるリスクがあります。
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05 贈与税・譲渡所得税が発生するケースと対策
遺産分割のやり直しで最も注意すべき税務上のリスクは、贈与税と譲渡所得税の二重課税です。具体的にどのようなケースで発生するか見ていきましょう。
贈与税が発生するケース
- Aさんが取得した預金500万円を、やり直し後にBさんが取得することになった場合、AさんからBさんへの「贈与」とみなされる可能性があります。
- 贈与税の基礎控除は年間110万円のため、110万円を超える財産の移転は贈与税の申告・納税が必要になります。
譲渡所得税が発生するケース
- Aさんが相続した不動産をやり直しでBさんに移転する場合、不動産の「売却」とみなされ、譲渡所得税(所得税・住民税合計で約20%)が課される可能性があります。
- ただし、相続開始から3年10ヶ月以内の売却の場合、相続税額の一部を取得費に加算できる「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」が使える場合があります。
リスクを回避するための対策
- やり直しを検討する前に、税理士に相談して税務上の影響をシミュレーションする
- できる限り、当初の協議段階で全員が納得できる分割内容を決める
- 未分割申告の場合は「申告期限後3年以内の分割見込み書」を提出して特例の適用可能性を確保する
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06 未分割申告後のやり直し(修正申告・更正請求)の流れ
相続税の申告期限(相続開始を知った翌日から10ヶ月以内)までに遺産分割が成立しなかった場合は、「未分割」として法定相続分で相続税を申告します。その後、分割が成立した場合の手続きについて解説します。
- 申告期限後3年以内に分割が成立した場合:配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用して税額が減少する場合は「更正の請求」(税金の還付請求)ができます。逆に税額が増える場合は「修正申告」が必要です。
- 更正の請求の期限:分割が確定した日の翌日から4ヶ月以内に申請します。
- 3年を超えて分割が成立した場合:原則として特例の適用はできませんが、「申告期限後3年以内の分割見込み書」を提出し、かつやむを得ない事情がある場合は税務署長の承認を受けることで特例適用の可能性があります。
【手続きの流れ】①遺産分割協議書の作成→②税務署へ更正の請求または修正申告→③各相続人が必要に応じて名義変更手続き。すべての手続きを期限内に完了させることが重要です。
なお、相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人数」です。未分割申告の際は法定相続分で計算しますが、実際の分割内容によって各相続人の税負担が大きく変わります。修正申告・更正請求の際は税理士に依頼することを強くお勧めします。
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07 やり直しを防ぐための最初の協議で気をつけること
最善の対策は、最初の遺産分割協議を慎重に進め、後からやり直しが必要な事態を防ぐことです。以下の点を協議前・協議中に確認しましょう。
- 全財産の洗い出し:不動産・預金・有価証券・保険・負債など被相続人のすべての財産を把握してから協議に臨みます。後から財産が発見されると、追加の協議が必要になります。
- 全相続人の確認:認知された子・養子・代襲相続人など、相続人の範囲を戸籍調査で正確に確認します。相続人の見落としは協議を無効にする原因になります。
- 遺言書の確認:遺言書がある場合は原則として遺言の内容が優先されます。自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要(法務局保管の場合を除く)です。
- 特別受益・寄与分の考慮:生前贈与を受けた相続人や被相続人の療養看護に貢献した相続人がいる場合は、その分を考慮した分割内容にすることで後のトラブルを防げます。
- 専門家への相談:税理士・司法書士・弁護士などの専門家に相談しながら協議を進めることで、税務上・法律上の問題を未然に防ぐことができます。
また、遺産分割協議書は曖昧な表現を避け、各財産の帰属先・持分割合・付随する義務(ローン負担など)を明確に記載することが重要です。「その他の財産はすべてAが取得する」といった包括条項を入れておくと、後から財産が発見された際のトラブルを防ぎやすくなります。
相続放棄を検討する場合は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。この期限を過ぎると原則として放棄はできなくなりますので注意が必要です。
この記事のまとめ
- 遺産分割協議のやり直しは、相続人全員の合意があれば法律上は可能(再分割協議)
- 一部の相続人が反対する場合は家庭裁判所の調停・審判で解決する必要がある
- 税務上は一度成立した協議のやり直しは「財産の移転」とみなされ、贈与税・譲渡所得税が発生する可能性がある
- 未分割申告後3年以内に分割が成立した場合は修正申告・更正請求が可能で特例も適用できる
- やり直しを防ぐには、最初の協議で全財産の洗い出し・全相続人の確認・専門家への相談を徹底することが重要
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EDITORIAL TEAM
こもれび編集部 | 相続・諸手続き担当
監修:終活・遺品整理の実務に詳しい編集チーム
本記事は公的機関の情報や一般的な実務をふまえて編集部が作成し、定期的に見直しています。内容に誤りがあれば編集部までご連絡ください。
最終更新日: 2026年06月25日
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