相続放棄でしてはいけないこと|単純承認とみなされる行為と注意点
相続放棄を決意していても、放棄前に特定の行為をしてしまうと「単純承認」とみなされ、二度と放棄できなくなる場合があります。この事実を知らずに相続財産を使ったり売ったりしてしまい、後悔するケースは少なくありません。
「親が借金を残して亡くなった」「相続財産よりも負債が多い」――そんな状況で相続放棄を考えているあなたに、放棄前に絶対にやってはいけない行為と、逆に問題ない行為の境界線をわかりやすく整理します。この記事を読めば、うっかり放棄の権利を失わずに手続きを進めるための知識が身につきます。
この記事でわかること
- 単純承認とみなされる具体的な行為(民法921条)
- 相続放棄前にやってはいけないことの全リスト
- 葬儀費用の支払いや固有財産の処分など「OK行為」との境界線
- 相続放棄の期限・申述先・延長申請の方法
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01 相続放棄とは何か|基本と期限を確認する
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産も負債もすべて引き継がないと宣言する手続きです。家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出することで成立し、放棄した相続人は「初めから相続人でなかった」ものとして扱われます(民法939条)。
- 申述先:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
- 期限:相続開始を知った日から3ヶ月以内(熟慮期間)
- 延長:期間内に家庭裁判所へ申請すれば熟慮期間の延長が認められる場合あり
- 費用:収入印紙800円+郵便切手代(裁判所によって異なる)
相続放棄は「財産を一切もらわない代わりに借金も負わない」選択肢です。被相続人に多額の借金や保証債務がある場合に有効ですが、期限と手順を誤ると取り返しがつきません。特に「してはいけない行為」を知らずに行ってしまうと、放棄の権利そのものを失います。次のセクションから具体的に解説します。
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02 単純承認とみなされる行為|民法921条の3つのケース
相続放棄前に特定の行為をすると、法律上「単純承認(財産も負債もすべて引き継ぐこと)をした」とみなされます。これを法定単純承認といい、根拠は民法921条です。一度単純承認とみなされると、原則として相続放棄はできなくなります。
【民法921条 法定単純承認の3要件】
①相続財産の全部または一部を処分したとき
②熟慮期間(3ヶ月)が経過したとき
③相続財産の隠匿・消費・悪意による財産目録への不記載をしたとき
- 財産の処分(①):売却・贈与・廃棄・使用消費など、財産の経済的価値を変える行為
- 期間経過(②):3ヶ月以内に申述も延長申請もしないまま放置する
- 隠匿・消費(③):他の相続人や債権者に知られないよう財産を隠したり使い切ったりする行為
特に①の「財産の処分」は日常的な行為と紛らわしいケースが多く、知らないうちに単純承認とみなされるリスクがあります。具体的にどんな行為がNGなのかを次のセクションで詳しく確認しましょう。
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03 絶対にしてはいけないこと|具体的なNG行為一覧
相続放棄を考えているなら、被相続人が亡くなってから放棄が受理されるまでの間、以下の行為は原則として避けてください。これらは単純承認とみなされる典型例です。
- 相続財産の売却:不動産・車・株式・貴金属などを売って換金する行為は「処分」に該当します
- 相続財産の贈与:他人や他の相続人に財産を無償で譲る行為も処分とみなされます
- 預金口座からの全額引き出しと使用:被相続人名義の口座から引き出して自分の生活費に充てる行為は危険です
- 相続財産による借金返済:被相続人の財産を使って被相続人の債務を返済する行為も処分に当たる場合があります
- 財産の隠匿・廃棄:他の相続人や債権者に見えないよう財産を隠したり捨てたりする行為
- 一部の財産だけを受け取ろうとする行為:「プラスの財産だけもらってマイナスは放棄する」ことは法律上できません
- 財産目録への故意の不記載:限定承認や相続放棄の手続き中に財産を目録に載せないと悪意の隠匿とみなされます
【重要】預金の全額引き出しは特に注意が必要です。相続財産から自己の生活費を支出したり借金返済に充てたりした場合、裁判所から「財産を処分した」と判断される可能性が高く、放棄が認められなくなるリスクがあります。
迷ったときは、まず弁護士や司法書士に相談してから行動することを強くお勧めします。一度取り返しのつかない行為をしてしまってからでは、専門家でも対処が難しくなります。
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04 やっても問題ない行為|固有財産と葬儀費用の扱い
相続放棄前でも「してはいけない行為」に当たらないケースがあります。不安のあまり何もできなくなる必要はありませんが、判断は慎重に行ってください。
- 自分固有の財産の処分:相続財産ではなく、もともと自分が所有していた財産の売却・使用は問題ありません
- 葬儀費用の支払い:被相続人の預金から葬儀費用を引き出すことは、社会的に相当な範囲であれば許容される場合があります(裁判所の判断による)
- 遺体・仏壇・位牌の引き取り:祭祀財産(祭具・墓など)は相続財産に含まれない場合が多く、引き取っても単純承認にはなりません
- 相続財産の保存行為:財産の価値を守るための最低限の管理(例:建物の雨漏り修理)は保存行為として許容される場合があります
- 相続人であることの確認作業:財産調査や戸籍収集など、放棄の判断をするための情報収集は問題ありません
ただし、葬儀費用については「被相続人の預金から引き出した金額」「使途の明確さ」などで判断が変わります。高額な引き出しや用途が不明な支出は単純承認とみなされるリスクがあるため、必ず領収書を保管し、使途を明確にしておきましょう。判断に迷う場合は事前に弁護士へ確認することが重要です。
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05 相続放棄の手続き方法|申述書の提出から受理まで
相続放棄は口頭では成立せず、必ず家庭裁判所への書面申述が必要です。手順を正確に把握して、期限内に手続きを完了させましょう。
- STEP1 申述書の入手:裁判所のウェブサイト(裁判所.go.jp)からダウンロード、または家庭裁判所の窓口で入手
- STEP2 必要書類の準備:被相続人の死亡診断書・戸籍謄本、申述人(放棄する方)の戸籍謄本など
- STEP3 申述書の提出:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に郵送または持参
- STEP4 照会・審問:裁判所から申述人へ照会書が届く場合があります。回答して返送します
- STEP5 受理審判:問題がなければ「相続放棄申述受理通知書」が届き、放棄が正式に成立します
【期限に間に合わない場合】相続を知った日から3ヶ月以内に「相続の熟慮期間伸長申請」を家庭裁判所に提出することで、期間を延長できます。財産調査が終わっていない場合などは早めに申請しましょう。
相続放棄は一度受理されると原則撤回できません(詐欺・強迫による場合を除く)。手続き前に財産と負債の全体像を把握し、本当に放棄が最善か慎重に判断してください。複雑な事情がある場合は弁護士や司法書士への相談を強くお勧めします。
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06 相続放棄後の影響と次順位相続人への連絡
相続放棄をすると、放棄した人は「初めから相続人でなかった」とみなされます(民法939条)。これにより、放棄した相続分は次の順位の相続人に移ります。この点を理解していないと、家族・親族間でトラブルになることがあります。
- 相続人の順位移動:子が全員放棄すると直系尊属(親・祖父母)が相続人に、直系尊属も放棄すると兄弟姉妹が相続人になります
- 連絡の重要性:次順位の相続人に事前連絡がないと、突然「あなたが相続人です」と債権者から通知が届く事態になりかねません
- 相続放棄申述受理証明書:放棄が受理されたことを証明する書類で、債権者や金融機関への提示に使用します(1通150円で発行申請可)
- 相続登記との関係:2024年4月1日から相続登記が義務化。相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が課されます。放棄者には登記義務は生じませんが、最終的に相続した人が対応する必要があります
相続放棄は「自分だけの問題」ではなく、次順位の親族全体に影響します。放棄を決めたら、速やかに関係する親族へ連絡し、必要に応じて一緒に弁護士へ相談することを検討してください。また、相続放棄受理後も管理義務(民法940条)が残る場合があるため注意が必要です。
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07 専門家への相談タイミングと費用の目安
相続放棄は自分で手続きできますが、「してはいけないことをすでにやってしまった」「財産の全容が不明」「債権者から催促が来ている」などの状況では、専門家への相談が不可欠です。
- 弁護士:単純承認の可否判断・債権者対応・訴訟リスクへの対応が必要な複雑なケースに最適。費用は着手金5〜10万円程度が目安
- 司法書士:申述書の作成代行・家庭裁判所への提出サポートを依頼可能。費用は3〜5万円程度が目安
- 法テラス(日本司法支援センター):収入が一定額以下の方は費用の立替制度が利用可能。0570-078374に電話相談できます
- 相談のタイミング:被相続人が亡くなってからできるだけ早く、遅くとも2ヶ月以内に相談することを推奨します
【参考:主な公的相談窓口】
・家庭裁判所:手続き全般の案内(裁判所.go.jp)
・法務局:登記関連の相談
・国税庁タックスアンサー:相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)など税務情報
・法テラス:費用負担が難しい方向けの支援
相続放棄は期限が厳格で、一度失った権利は原則取り戻せません。「まだ大丈夫」と思わず、被相続人が亡くなったらすぐに財産・負債の調査を始め、不安があれば専門家へ相談することが最善の対処法です。放棄前に弁護士に確認することで、手続きミスによる取り返しのつかない事態を防ぐことができます。
この記事のまとめ
- 相続放棄前に財産を処分・隠匿・消費すると民法921条により単純承認とみなされ、放棄できなくなる
- 預金の全額引き出しや私的流用は特に危険で、葬儀費用など相当な範囲の支出は許容される場合があるが要確認
- 相続放棄の申述期限は相続開始を知った日から3ヶ月以内で、間に合わない場合は家庭裁判所へ熟慮期間伸長を申請できる
- 放棄が受理されると次順位の相続人(直系尊属・兄弟姉妹)に相続権が移るため、事前に親族へ連絡することが重要
- 判断に迷う行為は必ず先に弁護士へ相談し、一度も取り返しのつかない単純承認行為をしないことが最善策
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EDITORIAL TEAM
こもれび編集部 | 相続・諸手続き担当
監修:終活・遺品整理の実務に詳しい編集チーム
本記事は公的機関の情報や一般的な実務をふまえて編集部が作成し、定期的に見直しています。内容に誤りがあれば編集部までご連絡ください。
最終更新日: 2026年06月25日
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