遺産分割協議書での代償分割の書き方|不動産を一人が取得する方法
代償分割とは、特定の相続人が不動産などの遺産を単独で取得し、取得できなかった他の相続人に対して現金(代償金)を支払うことで公平な相続を実現する分割方法です。遺産分割協議書にはこの代償金の金額・支払期日・支払方法を明確に記載しなければなりません。
「実家の不動産を自分が引き継ぎたいが、兄弟への対応が不安」「協議書への正確な書き方がわからない」と悩む方は多くいます。この記事では、代償分割の仕組みから遺産分割協議書の具体的な記載例・税務上の取り扱いまで、相続手続きの全体像をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 代償分割の仕組みと他の分割方法との違い
- 遺産分割協議書への具体的な記載方法と記載例
- 代償金に対する相続税・贈与税の取り扱い
- 不動産の相続登記義務化と手続きの注意点
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01 代償分割とは何か|基本の仕組みを理解する
代償分割(だいしょうぶんかつ)とは、相続人のうち特定の一人が不動産や自社株式など分けにくい財産を単独で取得し、その代わりとして他の相続人に対して現金(代償金)を支払う遺産分割の方法です。民法第906条の規定に基づき、相続人全員の合意があれば自由に選択できます。
- 現物分割:財産をそのまま相続人で分ける(複数の不動産がある場合など)
- 換価分割:財産を売却して現金を分ける
- 共有分割:財産を相続人が共有名義で保有する
- 代償分割:一人が取得し、他へ現金(代償金)を支払う
代償分割は、実家の土地・建物のように「売却したくないが分割しにくい」財産がある場合に特に有効です。長男が実家を引き継ぎ、次男・長女に代償金を支払うケースが典型例です。代償金は相続財産ではなく、相続人間の精算として支払われるため、原則として受け取った側に贈与税はかかりません(後述の税務上の注意点を参照)。

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02 代償分割を選ぶメリット・デメリット
代償分割を選択する前に、メリットとデメリットを正確に把握しておくことが重要です。状況によっては換価分割や現物分割の方が適している場合もあります。
- メリット①:不動産を売却せずに特定の相続人が引き継げる
- メリット②:相続人の間で公平な取り分を実現しやすい
- メリット③:事業用不動産・農地など継続利用が必要な財産に適している
- デメリット①:代償金を支払う相続人に十分な現金が必要
- デメリット②:不動産の評価額を巡って相続人間で争いになりやすい
- デメリット③:代償金が高額になると、支払う相続人の資金繰りが困難になる
代償金の原資がない場合は、不動産を担保に金融機関から融資を受けるか、分割払いの条件を協議書に明記することで対応するケースもあります。代償金の評価には不動産鑑定士の鑑定書や路線価を活用し、相続人全員が納得できる金額を設定することがトラブル防止の鍵です。
【ポイント】代償金の金額は相続人全員の合意で自由に決められますが、著しく低い金額にすると税務署から贈与と認定されるリスクがあります。不動産の時価や路線価を参考に、客観的に合理的な金額を設定しましょう。
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03 遺産分割協議書への記載方法と記載例
代償分割を行う場合、遺産分割協議書には「誰が何を取得するか」「誰が誰にいくら支払うか」「いつまでに支払うか」を明確に記載しなければなりません。記載が曖昧だと後々トラブルの原因になります。
基本の記載構成
- ①取得者と取得財産の特定(不動産は登記簿通りの表示で記載)
- ②代償金の金額(円単位で明記)
- ③代償金の支払期日
- ④支払方法(銀行振込先口座など)
- ⑤相続人全員の署名・実印の押印
記載例(抜粋)
「第○条 相続人 山田太郎(以下「甲」という)は、被相続人 山田一郎の遺産のうち、下記不動産を単独で取得する。
(不動産の表示:所在 東京都○○区○○町○丁目、地番 ○番○、地目 宅地、地積 ○○㎡ 他建物)
第○条 甲は、相続人 山田花子(以下「乙」という)に対し、前条の不動産取得の代償として、金○○○万円を令和○年○月○日までに乙の指定する銀行口座へ振り込む方法により支払う。」
遺産分割協議書は公正証書にする必要はありませんが、相続人全員の署名・実印の押印と、各自の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)の添付が必要です。不動産の相続登記や金融機関での手続きにも提出するため、相続人の数プラス数部を作成しておくとよいでしょう。
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04 代償分割における相続税・贈与税の取り扱い
代償分割に関連する税務上の取り扱いを正確に理解しておくことは非常に重要です。誤った認識でいると、予想外の税負担が生じる可能性があります。
- 代償金を受け取った相続人:原則として贈与税はかかりません。ただし、相続税の計算上は受け取った代償金を加算して相続税を申告します。
- 代償金を支払った相続人:相続税の申告において代償債務として控除できます。取得した財産の課税価格から代償金相当額を差し引いて計算します。
- 不動産の評価:相続税申告では路線価(または倍率方式)による評価額を使用します。代償金算定の基準を「相続税評価額」とするか「時価」とするかで税負担が変わるため、事前に税理士へ相談することをお勧めします。
【税務の注意点】国税庁の通達(相基通)によれば、代償分割における代償金が著しく低額または高額な場合、贈与があったとみなされることがあります。また、相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人数」です。基礎控除を超える場合は、相続開始を知った翌日から10ヶ月以内に相続税を申告・納付する必要があります(国税庁)。
相続税の課税対象となる財産総額が基礎控除以下であれば申告不要ですが、代償分割の場合は不動産の評価額と代償金の関係を慎重に確認することが大切です。複雑な事案では必ず税理士に相談してください。

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05 不動産の相続登記義務化と代償分割後の登記手続き
2024年4月1日から相続登記が義務化されました(不動産登記法改正)。代償分割により不動産を単独取得した場合も、この義務の対象となります。
- 登記期限:相続(遺産分割)によって不動産の取得を知った日から3年以内
- 違反した場合:10万円以下の過料が科される可能性があります(法務省)
- 2024年4月1日以前に発生した相続:過去の相続も義務化の対象。施行日から3年以内(2027年3月31日まで)に登記が必要
- 登録免許税:固定資産税評価額×0.4%(相続による取得の場合)
相続登記に必要な書類は、遺産分割協議書・相続人全員の印鑑証明書・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式・相続人全員の戸籍謄本・固定資産税評価証明書などです。法務局への申請は本人申請も可能ですが、書類の収集や申請書の作成が煩雑なため、司法書士へ依頼するケースが一般的です。
また、相続登記の申請義務を果たせない事情がある場合は、「相続人申告登記」という簡易な方法で義務を免れることもできます(法務省)。詳しくは最寄りの法務局や司法書士にご相談ください。
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06 遺産分割協議書作成の流れと必要書類
代償分割を含む遺産分割協議書を作成するまでの手順を整理します。準備から完成まで通常1〜3ヶ月程度かかるケースが多いため、早めに動き出すことが大切です。
- ステップ1:法定相続人を確定する(被相続人の出生〜死亡の戸籍謄本を収集)
- ステップ2:遺産の調査・評価(不動産登記簿・固定資産税評価証明書・金融機関の残高証明等)
- ステップ3:相続人全員で遺産分割の内容を協議する
- ステップ4:遺産分割協議書を作成する(代償金の金額・期日・支払方法を明記)
- ステップ5:相続人全員が署名・実印を押印し、印鑑証明書を添付する
- ステップ6:相続登記・金融機関の名義変更・相続税申告等の各種手続きに使用する
【重要】遺産分割協議書の作成にあたって公正証書は義務ではありませんが、公正証書にしておくと紛失リスクが低く、後の紛争を防ぎやすい利点があります。また、相続放棄を検討する方は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります(家事事件手続法)。期限を過ぎると原則として放棄できなくなりますのでご注意ください。
銀行口座が凍結されている場合でも、遺産分割前に「遺産分割前の預貯金払戻し制度」を利用できます。1つの金融機関につき、預金残高の3分の1に相続人の法定相続分を乗じた額(上限150万円)まで仮払いを受けることが可能です(民法第909条の2)。代償金の資金に充てる手段の一つとして検討してみてください。
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07 代償分割でよくあるトラブルと対策
代償分割は便利な方法ですが、手続きの不備や認識のずれからトラブルが発生するケースも少なくありません。主なトラブルとその対策を確認しておきましょう。
- トラブル①:不動産の評価額でもめる → 路線価・不動産鑑定士の鑑定書・不動産業者の査定書など複数の評価を参考にし、相続人全員が納得できる金額を設定する
- トラブル②:代償金が支払われない → 支払期日・支払方法を協議書に明記し、必要に応じて公正証書(強制執行認諾条項付き)を作成する
- トラブル③:後から新たな遺産が発見される → 協議書に「本協議書に記載のない遺産が発見された場合の取り扱い」に関する条項を盛り込んでおく
- トラブル④:相続人の一人が協議書への署名を拒否する → 調停(家庭裁判所)・審判を申し立て、裁判所の関与のもとで解決を図る
- トラブル⑤:税務調査で代償金の認定に問題が生じる → 代償金の金額設定根拠(鑑定書・路線価計算書等)を保存しておき、相続税申告は税理士に依頼する
代償分割は相続人全員の合意が前提です。一人でも反対すると成立しません。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所への遺産分割調停の申し立てを検討してください。調停でも解決しない場合は審判に移行し、裁判官が分割方法を決定します。弁護士・司法書士・税理士など専門家のサポートを早期に受けることがトラブル防止の最善策です。
この記事のまとめ
- 代償分割は、不動産を一人の相続人が単独取得し、他の相続人へ代償金を支払う分割方法で、相続人全員の合意が必要です。
- 遺産分割協議書には、取得財産の特定・代償金の金額・支払期日・支払方法を明記し、相続人全員の署名・実印・印鑑証明書を添付します。
- 代償金を受け取った相続人に原則として贈与税はかかりませんが、相続税申告で代償金を加算・控除する処理が必要です。
- 2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります(法務省)。
- 代償金の評価額設定や税務対応は専門家(税理士・司法書士)への相談が不可欠です。早期に専門家に依頼することでトラブルを防ぎましょう。
EDITORIAL TEAM
こもれび編集部 | 相続・諸手続き担当
監修:終活・遺品整理の実務に詳しい編集チーム
本記事は公的機関の情報や一般的な実務をふまえて編集部が作成し、定期的に見直しています。内容に誤りがあれば編集部までご連絡ください。
最終更新日: 2026年06月25日
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