遺品整理や実家の片付けが終わった後、「家そのものの汚れ」に直面して戸惑うご家族はとても多いです。長年住んだ家は、水回りの黒ずみ、キッチンの油汚れ、壁紙のヤニ、床のシミなど、遺品整理だけでは解決できない汚れが残ります。ハウスクリーニングの相場がどのくらいなのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

先にお伝えしておくと、ハウスクリーニングの相場は一戸建て(3LDK〜4LDK)の空室で7万〜14万円程度が目安です。ただし、汚れの程度や追加作業の有無によって費用は大きく変動します。遺品整理にもまとまった費用がかかった上に、クリーニング代もとなると、全体でいくらになるのか不安を感じるのは自然なことです。

社会福祉士としてご家族の支援に携わる中で、「遺品整理は終わったけれど、家のクリーニングにまたお金がかかると聞いて途方に暮れている」という相談を受けることがあります。費用の全体像を事前に把握しておくだけで、心理的な負担はずいぶん軽くなります。

この記事では、一般的なハウスクリーニングの相場に加えて、「遺品整理後の実家」「売却前の空き家」といったケース別の費用目安、遺品整理とハウスクリーニングの違い、そして業者選びの注意点までを整理しました。必要な費用を見通したうえで、落ち着いて判断するための参考にしてください。

ハウスクリーニングの相場──間取り別・場所別の費用目安

間取り別の費用相場──空室と入居中で変わる

ハウスクリーニングの相場は、「空室か入居中か」と「間取り(部屋の広さ)」によって大きく変わります。

一戸建て(空室)の場合、2LDK〜3DKで6万〜10万円、3LDK〜4DKで7万〜11万円、4LDK〜5DK以上で8万〜14万円が目安です。

マンションやアパート(空室)の場合は、1R〜1Kで1.5万〜2.5万円、1LDK〜2DKで2.5万〜4万円、2LDK〜3DKで4万〜5万円、3LDK〜4DKで5万〜7万円程度です。

入居中(家具がある状態)の場合は、上記より1〜2割高くなる傾向があります。家具の移動や養生の手間が加わるためです。

親御さんの実家をクリーニングする場合、多くは「遺品整理後の空室」状態です。空室のほうが料金は安くなりますので、遺品整理を先に済ませてからハウスクリーニングを依頼するのが、費用的にも作業効率的にもおすすめです。

場所別の費用相場──水回りが特に高い

ハウスクリーニングの相場は、場所ごとにも異なります。

キッチン(レンジフード含む)は1.2万〜2万円、浴室は1.2万〜1.8万円、トイレは6,000〜1万円、洗面所は7,000〜1万円が目安です。エアコンは1台あたり8,000〜1.5万円。窓やサッシは1枚あたり1,000〜3,000円程度です。

水回り(キッチン、浴室、トイレ、洗面所)はセットプランが用意されている業者も多く、個別に頼むよりも割安になるケースがあります。相場は3万〜5万円程度です。

実家の売却前にクリーニングを検討している場合は、水回りと玄関まわりを優先するのがコストパフォーマンスの高い方法です。不動産の内覧時に最も印象を左右するのがこの2箇所だからです。

費用が相場より高くなるケース──事前に知っておくと安心

ハウスクリーニングの相場はあくまで目安であり、状況によっては費用が上振れすることがあります。事前に知っておくと、見積もりを受け取ったときに驚かずに済みます。

まず、汚れが極端にひどい場合です。長年掃除されていないキッチンの油汚れや、浴室のカビ・水垢がこびりついている場合は、追加料金が発生しやすくなります。

次に、ペットの汚れや臭いがある場合です。猫や犬を飼っていた家では、毛、臭い、壁のひっかき傷の処理で追加費用がかかることがあります。

タバコのヤニ汚れも費用が上がる要因です。壁紙全体にヤニがこびりついている場合は、通常の清掃では落ちず、壁紙の張り替え(リフォーム)が必要になるケースもあります。

また、荷物が残っている場合も注意が必要です。遺品整理が完了しておらず残置物がある状態では、「入居中」扱いになったり、片付け費用が別途かかったりすることがあります。

親御さんの実家は「長年住んだ一戸建て」であることが多く、上記のいずれかに該当するケースがほとんどです。一般的な相場表の金額よりも2〜5割高くなる前提で予算を見ておくと安心です。

「親の実家」のハウスクリーニング──状況別の費用の考え方

遺品整理後にハウスクリーニングを頼む場合

遺品整理が完了し、家の中が空になった状態でハウスクリーニングを依頼するのが最も一般的なパターンです。費用の目安は、一戸建て3LDK〜4LDKで7万〜15万円程度ですが、汚れの程度によって変動します。

一部の遺品整理業者はハウスクリーニングにも一括で対応しており、別々に頼むよりも手間を省くことができます。ただし、クリーニングの品質は専門業者のほうが高い傾向があります。

判断基準としては、「売却前にきれいにしたい」「内覧に備えたい」場合は専門のクリーニング業者に依頼するのがおすすめです。「とりあえず最低限の清掃でよい」「当面は保管するだけ」という場合は、遺品整理業者の一括対応で十分でしょう。

ひとつ注意しておきたいのは、遺品整理業者が「クリーニング込み」と謳っていても、その範囲が簡易的な掃き掃除程度であることがあるという点です。「クリーニング」の具体的な内容、どの場所を、どの程度まできれいにしてくれるのかを事前に確認しておくことが重要です。

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空き家になった実家を売却する前のクリーニング

相続した実家を売却する場合、内覧前にハウスクリーニングを行うと、売却価格や成約スピードに好影響があるとされています。

費用の目安は、一戸建て全体で8万〜15万円程度です。これに加えて、壁紙の張り替えやフローリングのワックスがけなどの簡易リフォームまで含めると、20万〜50万円程度になることもあります。

ただし、クリーニングにかけた費用がそのまま売却価格に上乗せされるとは限りません。費用対効果を不動産会社に相談したうえで判断するのが合理的です。

「きれいにすれば高く売れる」と考えて過剰にリフォームやクリーニングに投資し、結果的に回収できなかったケースもあります。不動産会社に「どこまできれいにすべきか」を先に相談し、その助言をもとに業者を手配する順番が大切です。

特殊清掃が必要なケース──通常のハウスクリーニングとの違い

状況によっては、通常のハウスクリーニングでは対応できず、「特殊清掃」の範囲になるケースがあります。

孤独死が発生した部屋の清掃や消臭、ゴミ屋敷状態の実家の清掃、ペットの多頭飼育による深刻な汚れや臭い、長期間放置された空き家で害虫・害獣被害がある場合などが該当します。

特殊清掃の費用は、一部屋あたり3万〜30万円以上と幅が大きく、範囲や程度によって大きく変動します。通常のハウスクリーニング業者では対応できないケースが多いため、特殊清掃の実績がある専門業者に依頼する必要があります。

親御さんの状況によっては、実家が想像以上に汚れていたというケースは珍しくありません。特にセルフネグレクト(自分自身の生活管理が難しくなっている状態)が進んでいた場合、ゴミ屋敷化している可能性もあります。まずは現地を確認してから業者に相談するのが第一歩です。恥ずかしいと感じる必要はありません。専門業者はそうした状況に慣れていますので、安心して相談してください。

ハウスクリーニング業者の選び方──見積もりで確認すべきポイント

見積もりは必ず現地確認のうえで取る

ハウスクリーニングの見積もりは、電話やWebだけで概算を出してくれる業者もありますが、実際の汚れの程度は現地を見ないと正確にはわかりません。

特に、長年住んだ一戸建ての場合、汚れの蓄積度合いが一般的な賃貸物件とは大きく異なります。「相場どおり」にはならないことが多いため、必ず現地での見積もりを依頼してください。その際、現地見積もりが無料かどうか、見積もり後にキャンセルは可能かどうかも確認しておきましょう。

遠方の実家の場合、現地に行く手間が負担になることもあるでしょう。その場合は、写真や動画を業者に送って概算を出してもらう方法もあります。最終的な正式見積もりには現地確認が必要ですが、概算段階では遠隔でも対応してくれる業者が増えています。

見積もりの「ここを確認してください」──チェックリスト

ハウスクリーニングの見積もりを受け取ったら、いくつかの点を必ず確認してください。

まず、作業範囲が明確かどうかです。「全体クリーニング」とだけ書かれていても、エアコン内部、窓のサッシ、ベランダなどが含まれていないことがあります。「何が含まれていて何が含まれていないか」を確認することが大切です。

次に、追加費用の発生条件です。汚れがひどい場合の追加料金、駐車場代の有無、時間超過の場合の費用などを事前に確認しておきましょう。

損害賠償保険の有無も確認のポイントです。作業中に壁や設備を破損した場合の補償があるかどうか。保険に加入している業者のほうが安心です。

作業後の確認や保証についても聞いておきましょう。仕上がりに不満がある場合のやり直し対応があるかどうかは、業者選びの重要な判断材料です。

見積もりは2〜3社で比較するのが理想です。ただし、遺品整理後で疲弊している状況では負担が大きいことも事実です。「1社でも、作業範囲と費用の内訳を丁寧に説明してくれた」のであれば、それで十分です。

遺品整理業者とハウスクリーニング業者、どちらに頼むべきか

遺品整理後にハウスクリーニングを検討する際、「遺品整理業者に一括で頼むか」「ハウスクリーニング専門業者に別途頼むか」で迷う方は多いです。

遺品整理業者に一括で頼むメリットは、窓口が一本化されること、遺品整理とクリーニングを同時進行できるためスケジュールが短縮されることです。デメリットとしては、クリーニングの品質が専門業者に劣る場合があること、「クリーニング込み」の範囲が簡易的なことがある点です。

ハウスクリーニング専門業者に別途頼むメリットは、プロの機材や洗剤で徹底的にきれいになること。特に売却前は専門業者のほうが仕上がりが良くなります。デメリットは、遺品整理とは別の業者を手配する手間がかかること、スケジュール調整が必要な点です。

おすすめの判断基準としては、売却前や賃貸に出す前であれば仕上がりの品質を重視して専門のクリーニング業者に依頼する。当面保管するだけ、あるいは取り壊し予定であれば、手間と費用の効率を重視して遺品整理業者の一括対応を選ぶのが合理的です。

どちらにするか迷ったら、まず遺品整理業者に「クリーニングの範囲と内容」を具体的に聞いてみてください。それが自分たちの目的に十分であれば一括で依頼し、不十分であれば専門業者を別途手配するという流れが、最も無駄のない進め方です。

ハウスクリーニングの費用を含めた「実家の整理」全体の流れ

実家の整理にかかる費用の全体像──どこにいくらかかるか

親御さんの実家を整理するプロセスでは、ハウスクリーニング以外にも複数の費用が発生します。全体像を把握しておくと、資金計画が立てやすくなります。

遺品整理は、一戸建て3LDK〜4LDKで15万〜50万円程度(量や内容により変動)。ハウスクリーニングは同じ間取りで7万〜15万円程度です。簡易リフォーム(壁紙の張り替え、フローリングの補修など)が必要であれば10万〜50万円程度。不動産を売却する場合の仲介手数料は売却価格の3%+6万円(上限)。相続手続き費用として、相続登記で5万〜15万円、相続税の申告が必要な場合は15万〜50万円以上かかります。

トータルで見ると、50万〜150万円以上になることも珍しくありません。

ハウスクリーニングの費用だけに目を向けるのではなく、実家の整理にかかる全体の費用を見通しておくことで、「思ったよりお金がかかった」と後から慌てるケースを防ぐことができます。

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費用を抑えるためにできること

ハウスクリーニングの相場を把握したうえで、費用を少しでも抑えるためにできることがいくつかあります。

1つ目は、遺品整理とハウスクリーニングの順序を守ることです。遺品整理を先に済ませ、空室の状態でクリーニングを依頼してください。荷物が残っている状態で頼むと、入居中扱いになり割高になります。

2つ目は、自分でできる部分を事前にやっておくことです。大きなゴミの撤去や簡易的な掃き掃除など。ただし、高い場所の清掃や専用洗剤が必要な箇所は無理をせず、プロに任せてください。

3つ目は、閑散期を狙うことです。3〜4月の引っ越しシーズンや年末の大掃除シーズンは繁忙期で割高になります。可能であれば5〜9月頃に依頼すると、やや安くなる傾向があります。

4つ目は、セットプランの活用です。水回りセットや全体クリーニングパックなど、複数箇所をまとめて依頼すると割安になるケースが多いです。

費用を抑えることは大切ですが、「安さ」だけで業者を選ぶと仕上がりに不満が残る可能性もあります。特に売却前のクリーニングは、仕上がりが売却価格に影響しますので、品質とのバランスで判断してください。

この記事のまとめ──ハウスクリーニングの相場を把握して安心につなげる

この記事でお伝えしてきた内容を改めて整理します。

ハウスクリーニングの相場は、一戸建て3LDK〜4LDKの空室で7万〜14万円程度です。ただし、長年住んだ実家の場合は汚れの程度によって2〜5割増しになることがあります。

遺品整理後のクリーニングは、空室の状態で依頼するのが基本です。遺品整理を先に済ませてからハウスクリーニングの順番を守ることで、費用と効率を最適化できます。

売却前であれば仕上がりを重視して専門のクリーニング業者に依頼し、当面保管するだけなら遺品整理業者の一括対応を選ぶのが合理的な判断基準です。

見積もりは現地確認のうえで取り、作業範囲、追加費用の条件、損害賠償保険の有無を必ず確認してください。

そして、ハウスクリーニングは実家整理の「一部分」です。遺品整理、リフォーム、不動産売却、相続手続きなど全体の費用を見通しておくことで、落ち着いて判断できるようになります。

親御さんの実家を片付ける作業は、精神的にも体力的にも大変なことです。ハウスクリーニングの費用相場を事前に把握しておくだけで、「次に何をすればいいか」が見えてきます。一つずつ、無理のないペースで進めていきましょう。当ブログでは、遺品整理業者の選び方や実家の売却手続きについても記事をまとめていますので、あわせて参考にしていただければ幸いです。

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