高齢の親にスマホを持たせたいのに、「契約できなかった」「年齢的に難しいと言われた」

そんな経験をされた方もいらっしゃるかもしれません。結論からお伝えすると、年齢だけを理由に高齢者がスマホの契約を断られることは基本的にありません。ただし80歳以上の場合、キャリアのガイドラインにより、家族への意向確認が行われるケースがあります。

離れて暮らす親の見守りや緊急連絡のためにスマホを検討しているのに、いざ手続きを進めようとすると複雑でよくわからない。名義はどうすればいいのか、家族が代わりに契約できるのか、親の判断力に不安がある場合はどうなるのか。こうした疑問が次々と出てくるのは、ごく自然なことです。

社会福祉士として高齢者のご家族を支援する中でも、「親のスマホ問題」に関するご相談は非常に多くいただきます。契約そのものの方法だけでなく、不要なオプション契約や高額プランなどのトラブルを防ぐ視点も含めて、知っておいていただきたいことがあります。

この記事では、高齢の親がスマホ契約できない場合に考えられる理由、具体的な契約方法、トラブルを防ぐための注意点、そして困ったときの相談先までをわかりやすくまとめています。焦らず、一つずつ確認していきましょう。

高齢者がスマホを「契約できない」と言われる理由

年齢だけで契約を断られることは基本的にない

まず押さえておいていただきたいのは、法律上、年齢を理由にスマホの契約を拒否する規定はないということです。本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証など)が揃っていて、支払い能力があれば、何歳であっても契約は可能です。

ただし、業界の自主的な取り組みとして、80歳以上の方が契約する場合には家族への意向確認を行うことが推奨されています。これは電気通信事業者協会(TCA)が2018年に表明した方針で、高齢者を不要な契約から守るための配慮です。また、65歳以上の契約者に対しては、より丁寧でわかりやすい説明を行うことが各キャリアの取り組みとして定められています。

「断られた」と感じるケースの多くは、実は本人確認書類の不備や、契約内容の説明に対する理解の確認が十分にできなかった場合であることが少なくありません。

実際に「契約が難しい」のはどんなケース?

では、実際に契約がスムーズに進まないのはどのような場合でしょうか。

ひとつは、本人確認書類が揃わないケースです。運転免許を返納済みで、マイナンバーカードも作っていないという方は意外と多く、有効な本人確認書類がないと手続きを進められません。

ふたつ目は、契約内容の説明に対して理解の確認が取れない場合です。ショップ側としては、利用者が「説明内容を理解している」と確認できなければ、手続きを先に進めることが難しくなります。

みっつ目は、認知症などにより判断能力に明らかな低下がある場合です。意思能力が不十分な状態での契約は、法律上無効になる可能性があります(民法第3条の2)。

さらに、支払い方法の問題もあります。クレジットカードを持っていない、口座引き落としの手続きを本人だけでは進められない、といったケースです。

家族支援の現場でよく見かけるのは、「親が一人でショップに行ったものの、店員の説明が早くてよく理解できないまま帰ってきた」というパターンです。これは正確には「契約を断られた」のではなく、「契約が成立する前に手続きが止まった」状態であることがほとんどです。ご家族が同行するだけで解決するケースも多いので、まずは状況を確認してみてください。

認知症の親の場合、契約行為はどうなる?

親御さんに認知症の傾向がある場合、スマホの契約については慎重に考える必要があります。

民法では、意思能力のない人が行った契約は無効とされています(民法第3条の2)。ただし、認知症と一口に言っても進行度はさまざまです。軽度であれば、ご本人の意思確認のもとで契約が可能な場合もあります。一方で、判断能力が大きく低下している場合は、成年後見制度の利用を検討するか、家族名義でスマホを契約し、親御さんに使ってもらうという方法が現実的です。

ここで一つ、知っておいていただきたい注意点があります。認知症が疑われる段階で、ご本人が一人で携帯ショップに行き、意図しないまま高額な契約をしてしまうケースが、消費生活センターに多く相談されています。契約の問題だけでなく、親御さんを守るという意味でも、早めの対応が大切です。

高齢の親のスマホ、どうやって契約する?3つの方法

方法①|家族名義で契約し、親を「利用者」として登録する

もっともトラブルが少なく、管理しやすいのがこの方法です。子どもなどご家族の名義でスマホを契約し、実際に使う親御さんを「利用者」として登録します。

この方法の最大のメリットは、契約の管理、プラン変更、解約といった手続きをすべて家族側でコントロールできることです。万が一、親御さんが亡くなった場合の解約手続きもスムーズに行えます。キャリアによっては、親御さんがショップに行かなくても契約できる場合があります。利用者登録に必要なのは、親御さんの本人確認書類で、後期高齢者医療被保険者証でも対応可能なキャリアもあります。

デメリットとしては、親御さん本人がショップで問い合わせや変更をしたい場合に、手続きが制限されることがある点です。ただし、遠方に住む親御さんに見守り目的でスマホを持たせたい場合には、この方法がいちばん安心です。「親が一人でショップに行って、不要なオプションを契約してしまった」というリスクも防ぐことができます。

方法②|親名義で、家族が代理人として契約する

親御さんご本人の名義で、家族が代理人としてショップで手続きを行う方法です。「自分のスマホは自分の名前で持ちたい」という親御さんの気持ちを尊重できるのがこの方法の良いところです。

ただし、携帯の新規契約は原則として本人手続きが基本のため、代理契約のハードルはやや高めです。多くのキャリアでは、親御さん本人の委任状と本人確認書類に加え、代理人であるご家族の本人確認書類が必要になります。

親御さんがショップに一緒に行ける場合は、ご本人と家族が揃って来店するのがもっともスムーズです。代理契約の対応はキャリアや店舗によって異なることがありますので、来店前にショップへ電話で確認しておくことをおすすめします。一度足を運んだのに手続きできなかった、という二度手間を防げます。

方法③|親本人がショップに行く場合の「家族同伴のコツ」

親御さんが「自分で選んで契約したい」とおっしゃる場合は、その意思を尊重しつつ、ご家族が同伴するのがベストです。

家族が一緒にいるメリットは大きく、不要なオプションや高額プランの契約を防げること、店員の説明を一緒に確認できること、帰宅後のサポート体制を店員にその場で伝えられることなどがあります。

来店前に準備しておきたいのは、必要書類(本人確認書類、支払い用の口座またはクレジットカード、認印)の確認、親御さんの使い方のヒアリング(通話メインなのか、LINEも使いたいのか)、そして予算の上限を家族内で決めておくことです。できればショップの来店予約も取っておきましょう。待ち時間が長くなると、親御さんの体力的な負担が大きくなります。

現場でよく聞く失敗談としては、何も決めないまま来店し、長時間待たされた末に店員の説明を聞く頃には親御さんが疲れてしまい、よくわからないままうなずいて高額なプランを契約してしまった、というケースがあります。事前の準備が、結果として親御さんの負担を減らすことにつながります。

一目でわかる3つの方法の比較表

項目①家族名義+利用者登録②親名義で代理契約③親本人が来店(家族同伴)
契約の管理家族が管理しやすい ◎親が管理者になる △親が管理者になる △
手続きの手間比較的かんたん ○やや複雑 △来店が必要だがスムーズ ○
親の自尊心やや抵抗がある場合も「自分の契約」で納得感 ◎「自分で選んだ」感がある ◎
将来の解約ウェブで簡単 ◎やや手間がかかる △やや手間がかかる △
おすすめの状況遠方・見守り目的親の意思が明確な場合親が外出可能な場合

どの方法が正解というわけではなく、親御さんの状況やお気持ち、ご家族の生活環境によって合う方法が変わります。迷ったときは、管理のしやすさとトラブル防止の観点から、①の家族名義+利用者登録を軸に検討されるとよいでしょう。

高齢者のスマホ契約でよくあるトラブルと防ぎ方

不要なオプション・高額プランを契約させられる

高齢者のスマホに関するトラブルで、消費生活センターに最も多く寄せられるのがこのパターンです。「セットで買うとお得ですよ」「2年使えば実質0円です」といった、条件付きの複雑な説明の中で、気づかないうちに高額なタブレット端末やオプションサービスを追加契約してしまうケースが後を絶ちません。

ショップの店員に悪意があるわけではないケースがほとんどです。ただ、親世代にとっては一度に受ける情報の量が多すぎて、結果的に「よくわからないままサインしてしまった」ということが起こりやすいのです。

防ぐためのポイントは、まず家族が同伴して来店すること。来店時に「通話とLINEだけ使えれば十分です」と最初に伝えておくだけでも、不要な提案を受けにくくなります。契約後は自宅で一緒に契約書の内容を確認する時間をつくってください。

なお、万が一不要な契約をしてしまった場合でも、契約後8日以内であれば「初期契約解除制度」によって解約できる場合があります。ただし適用範囲には条件がありますので、おかしいと感じたら早めに確認することが大切です。

親がスマホを使いこなせず、結局使わなくなる

「せっかく契約したのに、全然使っていない」「毎月の料金だけ払い続けている」

こうしたケースは、実はとても多いです。

原因の多くは、「操作がわからない」「教えてくれる人がいない」「覚えようという気持ちが起きない」といったものです。スマホを渡しただけでは、使いこなせるようにはなりません。

対策としては、まず端末選びの段階でシニア向けの簡単スマホを選ぶこと。画面が大きく、操作がシンプルなものが向いています。そして最初に教える操作は、「電話をかける」と「LINEでメッセージを送る」の2つだけに絞ることをおすすめします。一度にたくさん教えると混乱してしまいがちです。

キャリア各社が開催しているスマホ教室や、自治体が行っている講座を活用するのも効果的です。離れて暮らしている場合は、家族が親のスマホの画面を遠隔で見ながら操作を教えられる「遠隔サポートサービス」を契約しておくと安心です。

ひとつお伝えしておきたいのは、「スマホを使いこなせない=スマホが不要」ではないということです。見守りアプリや緊急通報機能が入っているだけでも、離れて暮らすご家族にとっては大きな安心になります。最低限の機能が使えれば、それで十分です。

詐欺やフィッシングメールの被害に遭う

スマホを持つことで便利になる一方、フィッシング詐欺、ワンクリック詐欺、架空請求といったリスクが新たに生まれることも事実です。特に高齢の方は、「銀行からの緊急連絡です」「カード情報を確認してください」といった文面に反応しやすい傾向があります。

ご家族にできる事前の対策として、まず迷惑メールフィルターを設定しておくこと。「知らない番号や見覚えのないメールには反応しない」というルールを紙に書いてスマホの近くに貼っておくのも、シンプルですが効果があります。また、親御さんが勝手にアプリをインストールしないよう制限をかけておくことも有効です。

できれば定期的に、帰省時や電話の際に親御さんのスマホを一緒に確認する時間をつくっておくと、早い段階で異変に気づけます。

もし被害に遭ってしまった場合は、消費者ホットライン(電話番号188)や、警察相談専用電話(#9110)に相談してください。慌てずに、まず専門の窓口に連絡することが大切です。

スマホだけじゃない──親の「契約トラブル」全般に備えるために

困ったときの相談先を知っておくと安心です

スマホの契約に関する問題が解決したあとも、「今後また何かあったらどうしよう」という不安が残る方もいらっしゃるかもしれません。そんなときのために、いくつかの相談先を知っておくだけで気持ちが楽になります。

スマホに限らず、契約トラブル全般について相談できるのが消費者ホットライン(電話番号188)です。電話をかけると最寄りの消費生活センターにつながり、専門の相談員が対応してくれます。

高齢の親御さんの生活全般について相談したい場合は、地域包括支援センターが頼りになります。介護や見守り、権利を守るための相談まで、無料で幅広く応じてもらえます。介護認定を受けている方であれば、担当のケアマネジャーにも生活全般の困りごとを相談できます。携帯電話の契約に特化した相談先としては、TCA(電気通信事業者協会)の窓口もあります。

家族支援の現場で感じるのは、スマホ契約の問題は「氷山の一角」であることが多いということです。親御さんのお金まわりの管理全体を見直すきっかけとして捉えていただくと、将来のトラブル予防にもつながります。

親の判断力が心配なときは、早めの対策が大切です

スマホの契約手続きの中で、「親の判断力が以前より落ちているかもしれない」と感じた場合、それはスマホに限った問題ではない可能性があります。

判断力の低下は、通販の定期購入、不要なリフォーム契約、投資の勧誘など、さまざまな契約トラブルにつながることがあります。だからこそ、気づいた今のうちに備えておくことに意味があります。

今できることとしては、親御さんと一緒に通帳や保険証券、契約書類を整理しておくこと。不要な契約が残っていないか確認すること。そして、任意後見制度や家族信託といった将来に備えた制度について、まずは情報を集めておくことです。すぐに手続きをする必要はありません。「まだ大丈夫」と思えるうちに相談先だけでも確認しておくことが、いちばんの備えになります。

この記事を読んで、親御さんのスマホのことを調べているあなたは、すでに親の暮らしを大切に考えている証拠です。一つずつ、できることから進めていけば大丈夫です。

実家の片付けや遺品整理も、先に「相談できる先」を知っておくと安心です

スマホの契約問題に向き合っているご家族の中には、「実家をこの先どうするか」「将来、遺品整理が必要になったら」ということが頭の片隅にある方も少なくありません。

今すぐ行動を起こす必要はありません。ただ、「いざというときに相談できる場所がある」と知っておくだけで、漠然とした不安はかなり軽くなります。

実家の片付けや遺品整理は、専門の業者に相談することができます。業者を検討される際は、見積もりが無料で追加料金の説明が明確かどうか、遺品整理士の資格や業界団体への加盟など信頼性の担保があるかどうか、そして故人やご家族の気持ちに配慮した丁寧な対応をしてくれるかどうか、この3つを確認してみてください。