実家の片付けや遺品整理をしていると、引き出しの奥や仏壇の裏から古い硬貨が出てくることがあります。穴の開いた古そうな銭、記念硬貨、見慣れない外国のコイン。ネットで調べると「古銭 価値ない」という検索候補が目に入り、やっぱり値段なんてつかないのかな、と思われる方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、古銭の多くは残念ながら高い値段がつきません。ただし、「ほとんど価値がない」と「まったく価値がない」は違います。素人判断で処分してしまう前に、いくつかのポイントを確認するだけで、価値のあるものを見逃すリスクは大幅に減らせます。万が一、希少な古銭を知らずに捨ててしまったら、その後悔は取り返しがつきません。

遺品整理の現場でも、「この古銭、捨てていいですか?」と聞かれることはとても多いです。社会福祉士としてご家族の支援に携わる中で、古銭を相場より安く買い叩かれてしまったケース、逆に価値がないものに期待しすぎてしまったケース、どちらも見てきました。

この記事では、値段がつかない古銭の具体例、実は価値がある可能性のある古銭の特徴、査定で損しないための注意点、そして処分方法まで、古銭の知識がない方にもわかりやすく整理しました。親御さんが大切にしてきたものを、冷静に、そして丁寧に扱うための判断材料としてお役立てください。

古銭の多くは「価値がない」──まず現実を知っておく

「古い=価値がある」とは限らない理由

実家の片付けや遺品整理で古銭が見つかったとき、「古いものだから価値があるはず」と期待されるのは自然なことです。ただ、最初に正直にお伝えしておきたいのは、古銭の価値を決めるのは「古さ」ではないということです。

古銭の買取価格を左右するのは、主に3つの要素です。希少性(現存する枚数がどれだけ少ないか)、保存状態(傷や汚れの程度)、そしてコレクター需要(集めたいと思う人がどれだけいるか)。この3つが揃って初めて、高い値段がつきます。

たとえば、江戸時代の寛永通宝は約240年間にわたって大量に鋳造されました。そのため、一般的な通用銭(子銭)であれば1枚数円〜数十円程度にしかなりません。「江戸時代の古銭だから高価」というのは、残念ながら誤解です。同様に、記念硬貨も多くは額面通りかそれに近い金額で、「記念硬貨=プレミアがつく」というのも実態とは異なります。

さらに、古銭コレクター自体が年々減少傾向にあり、以前は需要があった種類でも値下がりしているものが少なくありません。

遺品整理の現場では、「これは江戸時代のお金だから高いはずだ」と期待されているご家族に、現実をお伝えしなければならない場面があります。期待しすぎた状態で業者の査定額を聞くと、不満や不信感につながりやすくなります。最初に相場感を知っておくほうが、冷静に判断でき、結果的に納得のいく対応ができます。

「価値がない」と「まったく無価値」は違う

ただし、古銭に価値がないと聞いて、「じゃあ全部捨てていい」と判断するのは早計です。「高額な取引価格にならない」ことと「まったく無価値」であることは違います。

まず、金や銀を含む古銭は、古銭としての評価とは別に、地金(素材そのもの)としての価値があります。金の価格が高騰している現在、この点は見逃せません。見た目が地味でも、素材に金銀が含まれていれば思わぬ値段がつくことがあります。

また、1枚では値段がつかない古銭でも、まとめ売り(キロ単位など)であれば買い取ってもらえる場合もあります。少量だから無意味、とは限らないのです。

そしてもうひとつ。買取価格がゼロ円であっても、歴史資料や教育素材としての価値、あるいは親御さんが大切に持っていたという家族の思い出としての価値はゼロではありません。「お金にならない=無意味」ではないということは、心にとめておいていただきたいと思います。

この記事では、そうした前提を踏まえたうえで、「買取市場で値段がつくかどうか」という実務的な観点に焦点を絞って解説していきます。

値段がつきにくい古銭の具体例──よく見かける5つのパターン

寛永通宝の通用銭(子銭)──最もよく出てくるが値段はほぼつかない

実家の整理や遺品整理で出てくる古銭の中で、最も多いのが寛永通宝です。丸い形に四角い穴が開いた、いわゆる「穴銭」の代表格です。

寛永通宝は約240年間にわたり全国各地で大量に鋳造されました。種類は168種類以上ありますが、一般的な通用銭(子銭と呼ばれます)は1枚10円〜数十円程度。古銭に価値がないと言われる理由の多くは、この寛永通宝の相場から来ています。穴銭を重量買い(キロ単位)で引き取る業者もありますが、1kgで3,500円前後が相場です。

ただし、すべての寛永通宝が同じ価値というわけではありません。「母銭」と呼ばれる鋳造の原型や、「島屋文」「二水永」といった希少な種類は、数千円から数十万円の値がつくこともあります。問題は、素人には母銭と子銭の区別がほぼつかないということです。「全部同じに見えるから全部ゴミだろう」と自己判断で処分してしまうのは危険です。

額面通りの記念硬貨──100円・500円記念硬貨の大半

1964年の東京オリンピック100円銀貨、万博の100円白銅貨、地方自治法施行60周年の500円硬貨など、記念硬貨はご実家から出てくることが多い古銭のひとつです。

しかし、発行枚数が多い記念硬貨の買取価格は、額面そのまま(100円や500円)というケースが大半です。特に白銅貨やクラッド貨(異なる金属を組み合わせたもの)はほぼ額面通りです。銀貨の場合は銀の地金価格分の上乗せがある程度です。

ただし、金貨は大きな例外です。天皇陛下御在位60年記念10万円金貨や、皇太子殿下御成婚記念5万円金貨などは、金の地金としての価値により額面を大きく超えます。10万円金貨で約21〜25万円の買取実績があります。未開封のプルーフ貨幣セットも額面を超える可能性があります。

現場でよくある失敗は二つのパターンです。「記念硬貨だからプレミアがつくはず」と期待して複数の業者に持ち込み、すべて額面回答で落胆するケース。そしてその逆に、金貨を「どうせ額面通りだろう」と銀行で額面交換してしまい、10万円以上の差額を逃してしまうケースです。金貨かどうかの確認は、処分前に必ず行ってください。

文久永宝・天保通宝の一般品

文久永宝は幕末に約8億9千万枚以上が鋳造された、日本最後の穴銭です。通用銭の買取価格は数十円程度で、古銭としての価値はほとんどありません。

天保通宝は楕円形の独特な形をした100文銭で、通用銭であれば数百円から千円程度が多いです。ただし、天保通宝には幕府が公式に鋳造した「公鋳銭」と、各藩が秘密裏に作った「地方密鋳銭」があり、密鋳銭のほうが希少でコレクターからの人気が高いという特徴があります。

いずれの古銭も、母銭や特定の鋳造地のものは例外的に高値がつくことがあります。見た目が似ていても価値が大きく異なるのが古銭の世界です。

状態の悪い古銭──錆び・欠け・磨きすぎ

古銭の世界では、保存状態が価値に直結します。錆びや腐食がひどいもの、欠けているものは大幅に減額されます。

ここで特に注意していただきたいのが、「磨きすぎ」です。価値を上げようと思って古銭を磨いたり、薬品で洗浄したりすると、逆に価値が下がります。買取業者の多くは「修正品」「強い磨きあり」として大幅減額の対象にしています。

ご家族が善意で古銭をピカピカに磨いてしまい、結果的に査定額が下がったという実例もあります。「汚れている方がコレクターには好まれる」こともある世界です。見つけた状態のまま、触らずに保管しておくのが鉄則です。水洗いも避けてください。

外国のコイン・旅行土産の硬貨・レプリカ

海外旅行のお土産として持ち帰った外国コインや、観光地で買ったレプリカ硬貨も、実家の整理でよく出てきます。

これらは古銭専門店では買取対象外となることがほとんどです。外国コインを重量買い(キロ単位)で引き取る業者もありますが、1kgで2,000円前後が相場です。レプリカ品や偽造品は当然ながら買取できません。

ただし例外として、中国古銭の一部(清朝銭など)にはコレクター需要があり、値段がつくことがあります。「外国のコインだからすべて価値がない」と決めつけず、判断がつかないものは専門の業者に見てもらうのが安心です。

「実は価値があるかもしれない」古銭の特徴──捨てる前にここだけ確認

金・銀が使われている古銭は地金価値がある

古銭に価値がないと言われる一方で、「実は価値があった」というケースも確かに存在します。その代表が、金や銀を含む古銭です。

小判、大判、一分金、二分金といった金貨は、金の含有量に応じた地金価値がベースにあり、さらに古銭としてのプレミアが加算されます。天保小判であれば約15万円前後の買取実績があります。

明治期の銀貨(一円銀貨や50銭銀貨など)も、銀の地金価格が高騰している現在、額面以上の価値がつくことが多くなっています。記念金貨(天皇陛下御在位記念やオリンピック記念など)は純金や高品位の金で製造されており、金相場に連動して額面を大きく超える価格になります。

見分け方の目安としては、手に持ったときに「ずっしり重い」と感じるかどうかです。重みがあるものは金属の含有量が高い可能性があります。ただし、素人判断には限界がありますので、重さや色が気になるものは専門家に確認するのが確実です。

エラーコイン──製造時のミスが価値を生む

穴の位置がズレている(穴ズレ)、刻印が二重になっている(影打ち)、表と裏が逆になっている(逆打ち)。

こうした製造時のミスがある硬貨を「エラーコイン」と呼びます。

現代の硬貨であってもエラーコインには高値がつきますが、古銭のエラー品はさらに希少で、コレクターからの需要が高いです。

遺品整理の現場で「なんか変な形のコインがある」とご家族が何気なく言ったものが、実はエラーコインだったというケースがあります。「形がおかしい」「文字がズレている」と感じるものがあれば、一旦よけておくのが安全です。「おかしい」と思った直感が正しいこともあります。

母銭──古銭の「金型」にあたる特別な一枚

母銭とは、通用銭(子銭)を大量生産するための鋳型の原型です。子銭よりも一回り大きく、文字がくっきりと浮き出ているのが特徴です。

母銭は残存数が非常に少なく、寛永通宝であっても母銭であれば数千円から数万円以上の値がつくことがあります。前章で「寛永通宝の通用銭は1枚数十円」とお伝えしましたが、母銭はまったく別物です。

また、子銭の中にも「手替わり品」と呼ばれる書体やデザインが微妙に異なるものがあり、珍しいものだと数万円の市場価値になることもあります。

ただし、素人での判別は困難です。寛永通宝だけで100種類以上あり、専門書が存在するほど複雑な世界です。「なんとなく他のより大きい」「文字がはっきりしている」と感じるものがあったら、他の古銭とは分けて保管しておいてください。

迷ったときの「捨てない3原則」

古銭の価値がないかどうか自分で完璧に見分ける必要はありません。専門家でも意見が分かれることがある分野です。ただし、「捨ててはいけないものを捨てない」ことだけは守っていただきたいので、3つの原則をお伝えします。

ひとつ目は、金属の色が金色や銀色で、重みがあるものは残すこと。金や銀が含まれている可能性があります。

ふたつ目は、形や文字に「おかしい」「他と違う」と感じるものは残すこと。エラーコインや母銭の可能性があります。

みっつ目は、判断に迷うものは「保留箱」に入れて、まとめて専門家に見てもらうこと。

この3つを守るだけで、価値のある古銭を誤って処分してしまうリスクは大幅に減ります。「自分で見分けよう」と思わなくて大丈夫です。上の3原則で「捨ててはいけないものを捨てない」それだけで十分です。

古銭の査定・処分で損しないために──業者選びと注意点

自分で価値を判断しようとしないのが最大の防御策

古銭に価値がないかどうかを自分で見極めようとするのは、実はリスクの高い行動です。古銭の価値判断は、文字の書体、鋳造地、保存状態の微妙な違いで大きく変わり、専門家でも意見が分かれることがある分野です。

ネットで「古銭 価値 一覧」などを検索して自己判断する方もいらっしゃいますが、同じ名前の古銭でも数十円のものと数万円のものが混在しています。一覧表だけでは正確な判断はできません。

一番安全な方法は、自己判断せず、まとめて信頼できる業者に査定を依頼することです。無料査定を行っている業者は多くありますので、費用の心配は不要です。

現場でよくある失敗として、遺品整理業者に「ついでに古銭も見てもらった」結果、古銭の知識がないスタッフに一括で数千円と査定され、後日その中に数万円の価値がある古銭が含まれていたことが判明するケースがあります。古銭は「ついで」ではなく、専門の査定を受けることを強くおすすめします。

古銭の査定先──3つの選択肢と特徴

古銭の査定先は、大きく3つの選択肢があります。

1つ目は、古銭専門の買取業者です。古銭に特化した鑑定士が在籍しており、希少種の見落としが少ないのが強みです。古銭の量が多い場合や、価値がありそうなものが含まれている場合に向いています。

2つ目は、総合買取業者(出張買取対応)です。古銭以外の遺品もまとめて査定できるメリットがあります。実家まで出張してくれるので、高齢のご家族にも負担が少なく、遺品整理の一環として古銭も含めて処分したい場合に適しています。

3つ目は、貨幣商(日本貨幣商協同組合の加盟店)です。業界唯一の公的な組合に加盟しており、鑑定の信頼性が最も高いといえます。高額な古銭が含まれていそうな場合に最も安心できる選択肢です。

遺品整理のご家族には「古銭だけは別の専門業者に見てもらう」ことをおすすめしています。遺品整理業者がついでに査定するケースでは、古銭の知識が不足しており本来の価値より安く買い取られることがあります。国民生活センターにも、遺品整理業者による不当な安値買取のトラブル相談が寄せられています。

査定で損しないための5つの注意点

古銭の査定を依頼する際に、損をしないために押さえておきたい注意点が5つあります。

ひとつ目は、磨かない、洗わない、触りすぎないこと。保存状態が価値に直結するため、見つけた状態のまま持ち込んでください。ホコリを軽く払う程度にとどめましょう。

ふたつ目は、最低2社以上に査定を依頼する(相見積もり)ことです。古銭は業者によって査定額に差が出やすいジャンルです。理想は3社に相見積もりを取ることです。

みっつ目は、査定額の根拠を聞くことです。「なぜこの金額なのか」を丁寧に説明してくれる業者は信頼できます。理由を言わずに一括で金額を提示する業者には注意が必要です。

よっつ目は、出張買取の「ついで買い」に注意することです。古銭の出張査定に来た業者が「ほかにも貴金属や着物はありますか?」と範囲を広げてくることがあります。訪問購入に関する相談件数は年間7,000件以上(2022年度)にのぼります。依頼した品目以外は見せないようにしてください。

いつつ目は、「今すぐ売らないと値下がりする」という言葉を信じないことです。即決を迫る業者は避けましょう。本当に価値のある古銭は、急いで売る必要がありません。「今日決めてくれたら高くします」と契約を急がせる手口は、遺品整理業界でもよく報告されるトラブルパターンです。冷静に比較する時間を持つことが最大の防御策です。

値段がつかなかった古銭の処分方法

査定の結果、値段がつかなかった古銭にもいくつかの選択肢があります。

場所を取らないのであれば、家族の思い出としてそのまま保管するのもひとつの選択です。記念硬貨であれば日本銀行の本支店で額面通りの現金と交換できますし、一般の銀行窓口でも対応してくれることがあります。

フリマアプリやオークションに出品する方法もあります。買取業者で値段がつかなくても、コレクターが少額で購入してくれることがあります。ただし出品や発送の手間がかかり、古銭の知識がないまま出品すると本来の価値より安く落札されるリスクもあります。

地域の博物館や資料館、学校に教育資料として寄贈するという方法もあります。

処分する場合は、古銭は金属ゴミとして自治体のルールに従って処分できます。ただし、処分の前に前章でお伝えした「捨てない3原則」を必ず確認してください。

古銭の整理をきっかけに、遺品整理全体を見通す

古銭は遺品の中では小さな品目ですが、「調べ方がわからない」「誰に相談すればいいかわからない」という悩みの構造は、遺品整理全体に共通するものです。古銭の査定を通じて信頼できる業者と出会えれば、ほかの遺品(貴金属、着物、骨董品など)の整理にもつながっていきます。

値段がつかなかったことで落胆されるご家族もいらっしゃいます。しかし、親御さんが大切にしていた古銭を「ちゃんと調べた上で判断した」という事実自体が、大切なプロセスです。調べずに捨てるのと、調べた上で判断するのとでは、後悔の大きさがまったく違います。

古銭の価値を調べて、ここまで読んでくださったこと。それだけで、親御さんの大切にしていたものに向き合っている証です。値段がつくかどうかに関わらず、そのプロセスに意味があります。当ブログでは、遺品整理業者の選び方や買取の活用法についても記事をまとめていますので、気になったタイミングであわせてお読みいただければ幸いです。