エンディングノートの書き方と項目一覧|親と一緒に始める終活の第一歩を社会福祉士がガイド
エンディングノートの書き方を調べているということは、「親に書いてもらいたいけど、どう切り出せばいいかわからない」という状況ではないでしょうか。「エンディングノート書いて」なんて言ったら怒られそう、でも何も準備しないまま万が一のことがあったら、その板挟みの気持ちは、とても自然なことです。
遺品整理の現場でご家族から最もよく聞く後悔のひとつが、「あのとき書いてもらっていれば」という言葉です。保険の契約先がわからない、口座がどこにあるかわからない、葬儀の希望も聞いていない。そうした状況に直面して初めて、エンディングノートの大切さを実感される方が本当に多いのです。
ただ、エンディングノートは「死の準備」ではありません。家族が困らないための情報整理であり、法的効力がないからこそ、気軽に、自由に、いつでも書き直せるものです。親御さんにとっても家族にとっても負担の少ない、終活の入り口といえます。
この記事では、エンディングノートに書くべき項目の一覧に加えて、親御さんへの切り出し方、一緒に書くときの進め方、書いた後の保管と活用方法まで、社会福祉士の視点でまとめました。家族支援の中で「エンディングノートがあったおかげで助かった」ケースと「なかったために困った」ケースの両方を見てきた経験から、本当に書いておくべき項目とその優先順位をお伝えしていきます。
エンディングノートとは何か──遺言書との違いと「家族側のメリット」
エンディングノートとは「家族が困らないための情報ノート」
エンディングノートとは、自分にもしものことがあったときに備えて、家族に伝えたい情報や希望を書き留めておくノートのことです。
「死の準備」と聞くと身構えてしまいますが、実際にはそういうものではありません。今の自分の情報を整理し、家族が必要なときに参照できるようにしておくためのツールです。エンディングノートの書き方に決まりはなく、市販の専用ノートを使っても、普通のノートやスマホのメモでも構いません。
法的効力がないことを不安に感じる方もいらっしゃいますが、むしろそれがメリットです。法的効力がないからこそ、自由に、気軽に、何度でも書き直せます。完璧に仕上げる必要もありません。
遺品整理の現場で最も困るのは、「故人の情報がどこにもない」というケースです。保険証書の場所、銀行口座、スマホのパスワード。
エンディングノートが1冊あるだけで、遺された家族の負担は劇的に軽くなります。
エンディングノートと遺言書はどう違うのか
エンディングノートと遺言書は混同されがちですが、役割が異なります。
遺言書は法的効力があり、相続財産の分配を法的に指定できるものです。ただし、形式に厳格なルールがあり、要件を満たさなければ無効になります。公正証書遺言の場合は費用もかかります。
一方、エンディングノートには法的効力がありません。その代わり、形式は自由で、費用はノート代だけです。医療や介護の希望、葬儀やお墓の希望、家族へのメッセージなど、遺言書ではカバーしきれない幅広い内容を書くことができます。
どちらか一方を選ぶのではなく、まずエンディングノートで情報を整理し、必要に応じて遺言書も作成するのが理想的です。エンディングノートは遺言書の「土台」になるものと考えてください。
「遺言書を書くのはハードルが高い」というご家族は多いですが、エンディングノートであれば遺言書の前段階として始めやすく、終活の入り口としてちょうどいい存在です。
エンディングノートが「ある」と「ない」で何が変わるか──遺品整理の現場から
エンディングノートの書き方を知る前に、「ある場合」と「ない場合」で何が変わるのかを、遺品整理の現場からお伝えしておきます。
エンディングノートがある場合、銀行口座や保険の情報がまとまっているので手続きがスムーズに進みます。葬儀の希望が明確なので判断に迷うことが減ります。スマホやパソコンのパスワードが残されていればロック解除もでき、サブスクの解約もスムーズです。相続の話し合いでも「親はこう望んでいた」という根拠になり、きょうだい間の揉めごとが減る傾向があります。
ない場合はどうなるか。口座がどこにあるかわからず金融機関を一つずつ回ることになります。保険が見つからず請求漏れが起きることもあります。スマホがロックされたまま、サブスクの料金が引き落とされ続けるケースも珍しくありません。葬儀の規模で家族の意見が割れ、「親はどうしてほしかったのか」がわからないまま、全員が後悔を抱えることになります。
遺品整理の現場で「エンディングノートがあってよかった」と涙ながらにおっしゃるご家族がいる一方、「なぜ書いてもらわなかったのか」と後悔される方も多くいらっしゃいます。この差は、ノート1冊分の情報整理をしたかどうか、それだけの違いなのです。
エンディングノートの書き方──本当に必要な項目を優先順位つきで整理
まず書いてほしい「最優先5項目」──遺品整理の現場で困る情報
エンディングノートの書き方について、ネットで検索すると網羅的な項目一覧がたくさん出てきます。ただ、すべてを一度に書こうとすると手が止まってしまいがちです。ここでは、「これがないと家族が実際に困る」という順に優先度をつけてご紹介します。
最も優先度が高い1つ目は、金融資産の情報です。銀行口座のある金融機関名、支店名、口座番号。生命保険や損害保険の会社名、証券番号、受取人。証券口座がある場合はその情報も含めます。亡くなった後の口座凍結、相続手続き、保険金請求は「情報がないと始まらない」のです。遺品整理の現場では、通帳が見つからず心当たりのある金融機関に片っ端から問い合わせるケースがよくあります。
2つ目は、デジタル情報です。スマホのロック解除方法(PINやパスコード)、パソコンやタブレットのログインパスワード、利用中のサブスクリプションサービス(動画配信、音楽、新聞など)の一覧と解約方法、SNSアカウントの扱い(削除するか残すか)。デジタル遺品のトラブルは近年急増しています。スマホがロックされると連絡先も写真も取り出せず、サブスクを解約できないまま故人の口座から引き落としが続くこともあります。
3つ目は、医療・介護の希望です。延命治療についての意思(希望する、しない、家族に委ねる)、かかりつけ医の情報(病院名、担当医名、連絡先)、アレルギーや持病、服用中の薬、介護が必要になったときの希望(在宅か施設か)。親御さんが急に倒れたとき、救急の場で家族が延命治療の判断を迫られることがあります。本人の意思がわからないまま判断するのは、家族にとって最も重い心理的負担です。
4つ目は、葬儀やお墓の希望です。葬儀の規模(家族葬、一般葬、直葬など)、宗派や菩提寺の情報、お墓の場所や墓じまいの意思、葬儀社と事前相談をしている場合はその情報。葬儀は亡くなってから数日以内に決めなければなりません。希望がわからないと、きょうだい間で「もっと盛大にすべき」「いや質素でいい」と意見が割れるパターンが非常に多いのです。
5つ目は、家族や親族の連絡先と訃報連絡のリストです。万が一のときに連絡すべき人の一覧(氏名、関係、連絡先)と、訃報を「必ず伝えてほしい人」と「伝えなくてよい人」の区別です。親御さんの交友関係を子ども世代が完全に把握しているケースは少なく、連絡すべき人がわからないまま、葬儀後に「なぜ知らせてくれなかったのか」とトラブルになることがあります。
余裕があれば書いてもらいたい「あると助かる項目」
最優先の5項目が書けたら、余裕のあるときに以下の項目も追加していくとさらに安心です。
相続に関する希望として、遺産の分け方についてご本人の考えを書いておくことも有益です。ただし法的効力はないため、正式にはこの内容をもとに遺言書を作成するのが望ましいです。
不動産の情報として、所有する土地や建物の所在地、登記情報、住宅ローンの有無も整理しておくと、相続手続きの際に助かります。
ペットがいる場合は、引き取り先の希望、かかりつけの動物病院、食事やケアの注意点を書いておくと、ペットの安全にもつながります。
家族へのメッセージとして、感謝の言葉や伝えておきたいことを自由な形式で書いておくのもよいでしょう。自分史や人生の思い出(生い立ち、大切な思い出、好きだったこと)は、遺品整理の際に「これは親が大切にしていたもの」と判断する手がかりにもなります。
エンディングノートの書き方で大切なのは、「全部書かなきゃ」と思わないことです。最優先の5項目だけでも書いてあれば、家族は十分に助かります。完璧を求めず、少しずつ追加していけば大丈夫です。
エンディングノートに「書いてはいけないこと」
エンディングノートの書き方で注意しておきたい点もあります。
まず、暗証番号やパスワードをそのまま記載するリスクです。ノートが第三者の手に渡った場合、悪用される可能性があります。パスワードの記載には工夫が必要で、ヒントだけ書いておく、パスワード本体は別の場所に保管して「ここにある」とだけ記しておくといった方法が安全です。
もうひとつ気をつけたいのが、遺産分割の具体的な指定を「これで決まり」という形で書いてしまうことです。エンディングノートには法的効力がないため、遺産分割を具体的に書いても法的な拘束力はありません。かえって「ノートにはこう書いてあるのに」と、相続トラブルの火種になることもあります。
遺産分割の希望を書くこと自体は問題ありませんが、「これは希望であり、正式には遺言書の作成をおすすめします」と付記しておくのが安全です。
実際に、エンディングノートに「長男に全財産を」と書いてあったものの法的効力がなく、相続で揉めてしまったケースもあります。相続に関しては、エンディングノートで方向性を整理し、遺言書で正式に残す。この二段階の流れが鉄則です。
親にエンディングノートをどう伝えるか──切り出し方と一緒に書くコツ
「縁起が悪い」と言われない切り出し方
エンディングノートの書き方を理解できても、「どうやって親に伝えるか」が最大のハードルだという方は多いのではないでしょうか。「エンディングノートを書いて」とストレートに伝えると、多くの親御さんは抵抗を示します。「死の準備をしろ」と言われたように感じてしまうからです。
切り出し方にはいくつかのコツがあります。
1つ目は、「自分のこと」として始める方法です。「私もいつ何があるかわからないから、自分のエンディングノートを書き始めたんだけど」と話すことで、親御さんに「あなたも書いて」と頼むのではなく、自然な会話の流れが生まれます。
2つ目は、「保険の確認」という実務の話から入る方法です。「お父さんの保険証書、どこにあるか教えてもらっていい?もし何かあったとき手続きに必要になるから」。エンディングノートという言葉を使わず、具体的な情報確認として切り出すと抵抗が小さくなります。
3つ目は、テレビや記事をきっかけにする方法です。「テレビでエンディングノートの特集やっていたよ。最近はスマホのパスワードも書いておくんだって」と、第三者の情報として話題にすると自然です。
タイミングとしては、法事や帰省で家族が集まる場が話しやすいでしょう。ただし、お正月など慶事の場は避けたほうが無難です。
親御さんへの切り出しで最も成功率が高いのは、「自分も書いている」というパターンです。「やってほしい」ではなく「一緒にやろう」というスタンスが、抵抗をぐっと減らしてくれます。
親と一緒にエンディングノートを書く具体的な進め方
切り出すことができたら、次は一緒に書いていく段階です。
まずはノートを選びましょう。市販のエンディングノート(1,000〜2,000円前後)を一緒に買いに行くのがおすすめです。項目が印刷されているので「何を書けばいいか」に迷いません。書店の相続コーナーや100円ショップでも手に入りますし、自治体で無料配布しているところもあります。
書き始めるときに大切なのは、「全部書かなくていい」と伝えることです。エンディングノートの書き方で最もありがちな失敗は、最初から完璧に仕上げようとして手が止まることです。「今日は保険の情報だけ」「次に会ったとき、かかりつけ医の情報を書こう」と、1回1テーマで少しずつ進めるくらいがちょうどいいペースです。
エンディングノートの「自分史」や「家族へのメッセージ」の項目は、親御さんの人生を聴く貴重な機会にもなります。書くことだけが目的ではなく、会話のきっかけとして活用してください。
書いた内容は、年に1回程度、帰省のタイミングなどで見直すとよいでしょう。口座の変更、保険の解約、サブスクの追加など、情報は変わっていくものです。
エンディングノートを「親に書かせる」のではなく「親と一緒に書く」にすると、それ自体が親御さんとの大切なコミュニケーションの時間になります。終活の話をきっかけに、普段は言えない感謝の気持ちを交わすご家族を何度も見てきました。
それでも親が書いてくれないときは
エンディングノートを嫌がる親御さんは少なくありません。「まだ元気だから必要ない」「そんな暗い話はしたくない」これは自然な反応です。
無理に書かせようとしないでください。「書いてくれなくても、話を聞かせてもらうだけでもいい」というスタンスが大切です。
最低限の情報(保険証書の場所、銀行口座のメモ、かかりつけ医の情報)だけでも口頭で確認し、子ども側がメモしておくのもひとつの方法です。エンディングノートの形にならなくても、必要な情報が手元にあれば、いざというときに家族は助かります。
「親がエンディングノートを書いてくれなかった」と悔やむ方は多いですが、話題にしたこと、話を聞こうとしたこと自体に意味があります。結果的にノートの形にならなくても、会話の中で重要な情報が得られていることは珍しくないのです。焦らず、何度かにわたって少しずつ話題にしていくくらいの気持ちで向き合っていただければと思います。
エンディングノートを書いた後──保管方法と活かし方
書いたエンディングノートはどこに保管するか
エンディングノートの書き方と同じくらい大切なのが、書いた後の保管です。せっかくノートを仕上げても、家族がその存在を知らなければ意味がありません。家族の誰か1人に保管場所を伝えておくことが、最低限の条件です。
保管場所の候補としては、自宅の決まった場所(仏壇の引き出しや書斎のファイルボックスなど)が一般的です。貸金庫を利用する方法もありますが、セキュリティは高い反面、開けるのに手続きが必要になる点に注意してください。信頼できるご家族に直接預けるという方法もあります。
紙のノートが失われた場合に備えて、デジタル版のバックアップも検討しておくと安心です。スマホで各ページの写真を撮っておく、クラウドに保存しておくなどの方法があります。ただし、暗証番号やパスワードが書かれている場合は、セキュリティに十分注意してください。
遺品整理の現場では、「エンディングノートがあるはずだけど見つからない」というケースが実際にあります。書いた後に「保管場所を家族に伝える」ところまでが、エンディングノートの完成です。
エンディングノートが遺品整理・相続をどう楽にするか
エンディングノートは「書いて終わり」ではなく、書いた内容が実際に力を発揮するのは、親御さんに万が一のことがあった後です。
遺品整理の場面では、保険証書や口座の情報がまとまっているため、遺品の中から重要書類を探す時間が大幅に短縮されます。「これは捨てていい」「これは残す」という判断基準も明確になり、作業全体がスムーズに進みます。
相続の場面では、親御さんの意思が書かれていることで、きょうだいの話し合いに「本人の希望」という共通の出発点ができます。法的効力がなくても、「親はこう考えていた」という情報があるだけで、合意形成は格段に進みやすくなります。
デジタル遺品の処理においても、パスワードが記載されていればスマホのロック解除ができ、サブスクの解約や大切な写真の取り出しがスムーズです。
エンディングノートがある遺品整理とない遺品整理では、家族の心理的負担が段違いです。「親が準備してくれていた」という事実自体が、ご家族の安心と感謝につながっていきます。
エンディングノートをきっかけに、次の一歩を踏み出す
エンディングノートは終活の「入り口」です。書いた内容をもとに、さらに次のステップに進むこともできます。
相続に関する希望をエンディングノートで整理した後は、法的効力のある遺言書の作成を検討してみてください。公正証書遺言がおすすめです。エンディングノートを書く過程で「家の中の荷物が多すぎる」と気づく方も多く、生前整理を始めるきっかけになることもあります。
専門家への相談先も整理しておきましょう。相続税が心配な場合は税理士に、遺言書の作成は行政書士や司法書士に、介護の不安はケアマネジャーや地域包括支援センターに相談できます。当ブログでも、生前整理の進め方や遺品整理業者の選び方について記事をまとめていますので、あわせて参考にしていただければ幸いです。
エンディングノートは「死の準備」ではなく、「家族を守るための情報整理」です。親御さんと一緒にこのノートを開くことが、終活の第一歩であり、家族の絆を深める時間にもなります。完璧を目指す必要はありません。できるところから、少しずつ始めてみてください。
